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「ミステリを読んでみたいけど、何かおすすめある?」と問われたときに推奨できる作品群を、私見でピックアップしてみました。
名作といわれるミステリ小説は数多く存在しますが、個々の嗜好によって、必ずしもどれもが受け入れられるものではありません。中には数ページ読んだだけで、自分にはちょっとしんどいなと感じる作品もあるはずです。
個人的な嗜好として、ミステリ作品には一定の緊張感とある種の不可思議さを求めるため、恋愛要素が強いもの、冗長的な描写が続くもの、魅惑的要素に欠けるものなどは対象作品から除外しています。
読み手を作中の舞台設定にぐいぐい惹き込み、脳を刺激してくれる作品群を私見で拾ってみました。
“脳裏に刻まれる”おすすめ「名作ミステリ」20選+5選
以下、国内作品・海外作品問わずランダムでピックアップしています。
ランキングではないので、興味がわいた作品をまずは読んでみることをおすすめします。自分に合う作家が見つかれば幸運ですし、さらに見聞を広めるためにもいろんな作風にふれたほうが良いと思います。
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1.「そして誰もいなくなった」アガサ・クリスティ
1939年刊行。
アガサ・クリスティの代名詞ともいえる名作「そして誰もいなくなった」。
クリスティ作品のランキングでも常に上位に選出される人気作です。
孤島に集まった10人の登場人物にふりかかる、マザーグース「10人のインディアン」になぞらえた連続殺人。
“クローズドサークル”と“見立て殺人”の傑作であり、後世の作家がオマージュ作品を多数刊行しています。
いつかは読まなければならない不朽の名作です。
2.「十角館の殺人」綾辻行人
1987年刊行。著者デビュー作。
「そして誰もいなくなった」のオマージュ作品として知られる名作。
本作は新本格ミステリの先駆けとなり、衝撃の叙述トリック作品としてあまりに有名な一冊です。
クローズドサークルの中で起こる見立て殺人は「そして誰もいなくなった」を想起させますが、本作には“島”の章と“本土”の章が加味されており、オリジナルの作品として読み込めます。
突如として訪れる、頭をガツンと殴られるような衝撃の一行が読み手の脳裏に刻まれます。
3.「白夜行」東野圭吾
1999年刊行。
ヒット作の多い作家ですが、本作は長編ミステリの中でも人気の作品です。伏線が至るところに張られ、つめ跡を残して回収していきます。
近年の著者の作品は社会派作品が多いですが、本作はどちらかというとサスペンス要素の強い“刺さる”名作。
亮司と雪穂の相関、二人の周辺で起きる事件事故が悲哀に満ちていて、読み手を作中の舞台にぐいぐい惹き込んでいきます。
2006年にドラマ化(主演・山田孝之)、2011年に映画化(主演・堀北真希、高良健吾)もされています。
4.「幻夜」東野圭吾
2004年刊行。
「白夜行」の後継ともいえる長編ミステリ。
(作中の)阪神・淡路大震災を機に動き出した、美冬と雅也の運命は光と影そのもの。
「白夜行」同様サスペンス要素が強く、二人を取り巻く陰鬱とした事件事故が読み手の心象に深く刻まれる一冊です。
2010年にWOWOW連続ドラマWでドラマ化(主演・深田恭子)もされています。
5.「告白」湊かなえ
2008年刊行。
2009年本屋大賞受賞。
イヤミス作品としても名高い著者デビュー作。
本作は、5人の登場人物による“独白”によって構成されています。各々が独善的に語る主観描写は、著者ならではの鋭利なアングル。えぐるように心の深淵に迫ってきます。
読後感は著者のセールスポイントでもある“あと味の悪さ”。イヤミス作品の名作といえる一冊です。
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6.「江戸川乱歩傑作選」江戸川乱歩
探偵小説の祖ともいうべき江戸川乱歩。
本作は文字通り乱歩作品の傑作選です。
乱歩といえば明智小五郎ですが、怪奇的でグロテスクな作風も多く、強烈なフェティシズムも色濃く残ります。
個人的には、「屋根裏の散歩者」「人間椅子」が印象的。本作には収録されていませんが、長編「孤島の鬼」などは怪奇的で不気味な世界観が味わえます。
いずれの名作も一読の価値があります。
7.「八つ墓村」横溝正史
江戸川乱歩と並び称せられる横溝正史。本作は横溝正史の代表作の一冊としてあげられる名作です。
何度も映像化されているため、ドラマ版のほうで知られているかもしれません。
横溝作品でもっとも有名なのは名探偵・金田一耕助ですが、本作は金田一耕助シリーズの長編作品です。ただ、展開上、中盤あたりからの登場となり、「獄門島」「犬神家の一族」のように活躍するシーンはあまりみられません。
とはいえ、ドラマとはまた違った印象を受ける必読の一冊です。
8.「マリオネットの罠」赤川次郎
1977年刊行。
三毛猫ホームズシリーズで有名な著者ですが、本作は著者人気ランキングでも上位にランクする名作。
コミカルなテイストではなく、シリアスなタッチでサイコキラーの連続殺人を描写しています。
ミステリアスな峯岸家の面々、幽閉された少女など、プロットに定評のある著者ならではの意外な展開が待ち受けています。
赤川作品の中でも推奨できる一冊です。
9.「アクロイド殺し」アガサ・クリスティ
1926年に発表された不朽の名作。
クリスティ作品の名探偵・“ポアロ”シリーズの3作目。
結果的に“叙述トリック”を世に問うことになった、ある意味革新的な一冊です。
本作は後世に多大な影響を及ぼした名著であり、奇想天外な着想ゆえに、称賛と同時に批判も受けることになった名作。
のちに“フェア・アンフェア論争”を引き起こすまでに至り、アンフェア側の急先鋒S・S・ヴァン・ダインが発表した「ヴァン・ダインの二十則」はあまりにも有名です。
叙述トリック作品にふれるにあたり、必読の一冊といえます。
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10.「異人たちの館」折原一
1993年刊行。
2018年本屋大賞発掘部門の「超発掘本!」に選出。
あとがきで著者自身が語っていますが、本作は著者渾身の力作。サスペンス要素の強い作品ですが、叙述トリック作品としても有名です。
作中作、独白、年譜、関係者インタビューなどテキストを頻出させ、多重文体で読み手を揺さぶり続けます。
過去実際に起きた事件のアレンジ、“異人”の存在、何者かによるモノローグ(独白)、前のめりになる要素がふんだんに盛り込まれた一冊です。
11.「慟哭」貫井徳郎
1993年刊行。著者デビュー作。
重厚な描写が多いことで知られる貫井作品ですが、本作は著者代表作ともいえる深みのある一冊。
連続少女誘拐事件を背景に、“彼”の視点で進行する描写が奇異に映り、作中の舞台設定に惹き込まれます。
被疑者検挙に尽力する捜査本部の俯瞰と、新興宗教に心の救いを求める“彼”視点の描写はどこで交わるのか。
叙述トリック作品としても知られていますが、著者が届けたいメッセージの余韻が残る秀作です。
12.「噂」荻原浩
2001年刊行。
ユーモアのある描写などエンターテインメント性で定評のある著者ですが、本作はシリアルキラーが登場するサイコサスペンス。
ベテラン刑事・小暮の冷静かつユーモラスな視点には人情味が感じられ、著者特有の人物描写が映えます。
ラストの衝撃は意外なアングルから練られたプロット。作中に張られた伏線に気づくのは、ラストにたどり着いたときでしょう。
本作は荻原作品の読了有無を問わず推奨できる一冊です。
13.「犬神家の一族」横溝正史
1972年刊行。
ドラマ化、映画化など多数の映像化作品が存在しています。
横溝正史の代表作にあげられることも多く、おそらく金田一耕助シリーズとしてもっとも有名な作品です。
犬神家の一族といえば、佐清の“白いゴムマスク”と“湖面から突き出た2本の足”を思い浮かべるのも、映像化作品が広く知られている所以でしょう。
犬神佐兵衛の遺書に端を発する一連の殺人事件はまさに一大サスペンス。
日本一有名といっても過言ではない古典トリックは一読の価値があります。
14.「オリエント急行の殺人」アガサ・クリスティ
1934年に発表された名作。
“ポアロ”シリーズの8作目。
映像化作品としては「オリエント急行殺人事件」のタイトルで知られています。
本作はクリスティ作品の中でも人気のある名作で、予想だにしない結末にクリスティ作品の真骨頂をみることができます。
クリスティの代表作にもあげられる一冊を避けて通ることはできません。
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15.「蝶々殺人事件」横溝正史
1926年に発表された名作。
本作は著者が自選でベスト10に挙げるほどの力作です。
同時期に発表された「本陣殺人事件」と、どちらが名作か当時議論が分かれたのは有名な話。
横溝作品特有のおどろおどろしい雰囲気はなく、都会的でスマートに読める一冊です。
金田一シリーズの影に隠れがちですが、本作は“由利&三津木”シリーズのロジカルな本格ものとして楽しめます。
横溝作品は金田一シリーズだけではないことを証明している傑作です。
16.「Xの悲劇」エラリー・クイーン
1932年に発表された名作。
ロジカルな作品の王道として必ず名が挙がるエラリー・クイーン。
本作は名探偵ドルリー・レーンで有名な「悲劇」4部作の1作目です。
秀逸なプロットで構成されている本作は、時代を超えて現代でもそのクオリティは色褪せていません。
ダイイングメッセージが示すものとは。一度はふれてみるべき名作です。
17.「Yの悲劇」エラリー・クイーン
1932年に発表された名作。
「悲劇」4部作の2作目。
Xの悲劇に同じく、名探偵ドルリー・レーンが独特の見地から謎を解き明かしていきます。
Xの悲劇と同じ舞台(ニューヨークとその近郊)ではあるものの、本作はハッター家の面々が奇怪なぶんインパクトがあります。
ホワイダニットに迫るドルリー・レーンの苦悩は必読です。
18.「迷路館の殺人」綾辻行人
1988年刊行。
“館”シリーズの3作目。
本作にふれてまず目を引くのが“作中作”です(実質的には“作中作中作”)。
特異な条件で形成された“クローズドサークル”は読み手を惹き込む舞台として十分。この条件下で起こる“見立て殺人”が本作のプロットです。
エピローグで明かされる真相は、叙述トリック作品として一読の価値があります。
19.「ハサミ男」殊能将之
1999年刊行。著者デビュー作。
同年第13回メフィスト賞を受賞。
叙述トリック作品としても著名な一冊です。
サイコパスな“わたし”視点の描写に揺さぶられ、伏線に気づきつつもラストまで翻弄されるのは必至。
ハサミ男の犯行を模倣する第三の殺人、その真相を暴くためにシリアルキラーが探偵役をこなすなど、精巧なプロットによって構成されている名作です。
20.「殺戮にいたる病」我孫子武丸
1992年刊行。
叙述トリック作品として必ず挙げられる名作。
本作に仕掛けられた叙述トリックはミスリード必至の一級品。巧妙に伏線が張られているものの、一読してそれを読み解くのは至難です。
サイコキラーによる猟奇的殺人の描写がグロテスクなことでも知られていますが、その是非は抜きにしても、一読の価値がある一冊です。
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以上が私見でセレクトした名作ミステリ20選ですが、これらに次ぐ名作と呼べる作品群も多数存在するため、追加で5作品をピックアップ。
21.「愚行録」貫井徳郎
第135回直木賞の候補作。インタビュー形式+独白で構成。
22.「宿命」東野圭吾
秘められたプロットが響く名作。本作発表の前後から社会派推理小説へ推移した感。
23.「水車館の殺人」綾辻行人
現在と過去。時空を隔てて明かされる事実とは──。
24.「星降り山荘の殺人」倉知淳
叙述トリック作品。読み手への掲示(テキスト)が頻出。
25.「予告殺人」アガサ・クリスティ
フーダニット、ハウダニット、ホワイダニットいずれも秀逸。
以上がおすすめミステリ25作品です。
個々で感じるものはそれぞれなので、一つでも刺さるものがあれば。
一方で、著名な作品でも個人的には推奨から逸れるものも存在します。
冒頭でも示しているとおり、ミステリ作品には一定の緊張感とある種の不可思議さを求めるため、恋愛要素が強いもの、冗長的な描写が続くもの、魅惑的要素に欠けるものなどは、残念ながら推奨作品としてセレクトするまでには至りません。
以下の著名な作品群は個人的な嗜好と合わず、推奨のテーブルには載らなかったものです。
- 「アヒルと鴨のコインロッカー」伊坂幸太郎
- 「イニシエーション・ラブ」乾くるみ
- 「女王国の城」有栖川有栖
- 「占星術殺人事件」島田荘司
- 「僧正殺人事件」S・S・ヴァン・ダイン
written by 空リュウ
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