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【NPB】クライマックスシリーズは必要か廃止か

NPB-プロ野球-クライマックスシリーズは必要か

ペナントレース2位や3位のチームが1位のチームを倒して日本シリーズへ進出するたびに、にわかに熱を帯び始める“クライマックスシリーズ廃止論”。今回も至るところで侃々諤々の議論がなされていることと想像します。

導入後10年以上が経過し、現行の制度のまま継続して良いのか、または改善すべきか、はたまた廃止か──。今一度ペナントレースとクライマックスシリーズのあり方を見直す必要性があるのは間違いありません。

クライマックスシリーズとペナントレースの相関を見直す必要性

2017年ペナントレースは、セリーグでは1位広島東洋カープが2位阪神タイガースに10ゲーム差をつけ、パリーグでは1位福岡ソフトバンクホークスが2位埼玉西武ライオンズに13.5ゲーム差をつけて優勝しました。

現行の制度では、クライマックスシリーズの前に、セリーグ・パリーグの各優勝チームが決定しています。多くのファンが矛盾を感じているのは、「日本シリーズというNPB最高峰の決戦に、リーグ優勝チームが出られない可能性がある」という点でしょう。

現行のクライマックスシリーズは後づけの制度

そもそもクライマックスシリーズは、ペナントレース優勝チーム決定後の消化試合をなくすために考えられた施策でもあります。早い段階で優勝チームが決まり、残りの試合が消化試合になってしまうと、選手は個人成績に走ってしまい、見る側もつまらないゲームになりがちです。そうなると、ファンも球場から足が遠のき、興行的にもよろしくありません。

これを改善するために2004年にパリーグが先行して導入したのがきっかけ。これが興行面でも成功し、セリーグでも2007年に本格導入して現在の制度に至っています。いろんな意見がありますが、ここまで浸透したクライマックスシリーズをなくすという選択肢は、流れに逆行しているように感じます。

前述しましたが、クライマックスシリーズの存在に疑問を抱く意見の多くが、ペナントレース優勝チームが日本シリーズに出れないという矛盾を指摘したもの。現在のクライマックスシリーズが施行されるに至った理由が後づけのものであるため、そもそものズレがそこにあります。

リーグ優勝チームが日本シリーズに進出できる制度とは

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ペナントレースで優勝チームを決定してしまっている以上、現行のクライマックスシリーズの制度では、ペナントレース優勝チームが日本シリーズに進出できない可能性があるという矛盾は消せません。矛盾を解消するには、ペナントレースとクライマックスシリーズの相関を見直さないと成立しないでしょう。

クライマックスシリーズの優勝チームがシーズン優勝チームになる制度に変更するなど、現状の制度を見直さないと今後もこの矛盾は解消されないままです。

クライマックスシリーズとペナントレースの相関はMLBの流れをくんでいることもあり、いま一度、MLBの制度を考察する必要があります。

MLBではポストシーズン(プレーオフ)でリーグ優勝チームを決めるという制度が成立しています。そもそもMLBにはNPBの倍以上のチーム数(30チーム)が存在し、2リーグ各3地区制(5チーム×3地区×2リーグ)で、ポストシーズンへ進出するためにレギュラーシーズンを争います。多くのチームが存在する中、「上位約3割のチーム数でポストシーズンを戦う」という妥当な数字に落ち着いているため、レギュラーシーズンとポストシーズンとの相関も確立されています。

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細かくみると、1リーグ15チーム中、ポストシーズンに進出できるのはワイルドカード2チームを含む計5チームです(各地区優勝チームおよび優勝チームを除いた勝率上位2チーム)。その5チームでトーナメント制のポストシーズンを戦ってリーグ優勝チームを決め、リーグ優勝チームがワールドシリーズに進出し、MLBのNo.1を決めます。リーグ優勝チーム同士がワールドシリーズに進出するので、NPBの日本シリーズで起きるような“リーグ3位vsリーグ1位”の対戦はありません。

NPB独自のクライマックスシリーズを

とはいえ、1リーグ15チームあるMLBの制度をそのままNPBに当てはめることはできないでしょう。1リーグ6チームしかないチーム数でMLBの制度を当てはめてしまうと、現行のように半分の3チームでクライマックスシリーズを争うというアイデアになってしまいがちです。

「消化試合をなくし、興行的に盛り上げる」というコンセプトを差し置いて、「そもそも12チームしかないNPBの組織に半分のチームが進出できてしまうクライマックスシリーズは必要なのか」という意見が、クライマックスシリーズ廃止論の中でも多くを占めているのも頷けます。

これらをすべて解決する制度を今すぐ確立することは不可能ですが、クライマックスシリーズを受け入れて制度化するには、少なくともこれまでの概念を刷新しないといけない段階にきているのは間違いありません。

「レギュラーシーズンでリーグの順位を争い、プレーオフで上位チームによるトーナメントによって優勝チームを決める」という制度は、野球以外のスポーツでも広く採用されています。レギュラーシーズンのような長い戦いの中での戦略と、プレーオフのような短期決戦での戦略には当然差異があり、そこにも醍醐味が感じられます。

プレーする側には多くの戦術が求められ、見る側も異なる条件での応援に白熱します。また、特に国際試合では短期決戦での結果が求められるため、国内でも同様の制度を導入して場慣れしておかないと世界レベルから置いていかれます。

NPB-プロ野球-クライマックスシリーズは必要か

NPBの長い歴史の中でつくり上げられた「ペナントレースでリーグ1位になったチームこそ、リーグ優勝チームとしてふさわしい」という概念を覆すには多大な労力が必要であり、また大きな賭けにもなるでしょう。

いろんな意見が錯綜する中、どれがもっとも相応しいかは議論が必要ですが、個人的には、今のところ以下のアイデアがクライマックスシリーズとペナントレースの相関を成り立たせてくれるように感じます。

  • 12球団を1リーグ制にする
  • 1リーグを3ブロック(地区)に分ける(セントラル、パシフィック、新名称など)
  • 1ブロック4チームとする
  • 各ブロック優勝チームおよび(各ブロック優勝チームを除く)勝率上位2チームの計5チームによるプレーオフ(クライマックスシリーズ)を行う
  • プレーオフ(クライマックスシリーズ)は複数試合による先勝制のトーナメント方式で行う
  • (各ブロック優勝チームを除く)勝率上位2チームが対戦し、その勝者がトーナメント・セミファイナル(ファーストステージ)へ進出する(MLBでいうワイルドカード)
  • セミファイナル(ファーストステージ)は(ブロック優勝チーム中)勝率1位と(MLBでいう)ワイルドカードの勝者の対戦、(ブロック優勝チーム中)勝率2位と3位の対戦とする
  • セミファイナル(ファーストステージ)は3勝先勝制、ファイナル(日本シリーズ)は4勝先勝制で行う

written by 空リュウ

【2017NPB】横浜DeNAベイスターズがCS下克上で日本シリーズへ

2017横浜ベイスターズ-クライマックスシリーズ下克上

2017年度NPBセリーグ・クライマックスシリーズは、ファイナルステージで横浜DeNAベイスターズが広島東洋カープを対戦成績4勝1敗で下し、ベイスターズが19年ぶりとなる日本シリーズ進出を決めました。

ペナントレース3位のベイスターズは、ファーストステージでペナントレース2位の阪神タイガースを2勝1敗で下しているため、3位のチームが日本シリーズに進出するのはセリーグでは初となります(パリーグは2010年の千葉ロッテマリーンズ)。

マシンガン打線を彷彿とさせるDeNAベイスターズ打線の下克上劇場

1990年代にその名を轟かせた“マシンガン打線”の勢いが、今回のクライマックスシリーズのベイスターズ打線に垣間見れた気がします。対阪神とのファーストステージ初戦こそ沈黙しましたが、2戦目の逆転勝利を機に打線の勢いは増し、ファイナルステージでも1敗から4連勝するなど一気の爆発力がありました。

悪条件での勝利が下克上の序章に

2017横浜ベイスターズ-クライマックスシリーズ下克上

ファーストステージ初戦を0-2で落としたあとの第2戦は、雨天泥グラウンドでのゲーム。

先に2勝したほうがファーストステージ突破という状況で阪神に先制され、崖っぷちのベイスターズ。しかし、主軸のロペス、宮崎らの犠飛、タイムリーで逆転に成功。さらに、筒香のタイムリー、代打・乙坂の3ランなどの猛攻も加わり、結果13-6の大勝でした。

この勢いのまま第3戦も6-1で阪神を下し、ベイスターズがファーストステージを突破。

今回のクライマックスシリーズで課題にあがったのは日程でしょう。いくら後ろが詰まっているからとはいえ、あの泥グラウンドの悪条件の中ゲームを強硬するのは、プロの興行とはいえないレベルです。のちに、妥当とはいえ、ファイナルステージ初戦で5回降雨コールドゲームの判断をしたのも物議をかもしました。

投打がかみ合うベイスターズ、らしさが出ないカープ

ペナントレース1位のカープはアドバンテージの1勝にくわえ、ファイナルステージ初戦を降雨コールドで勝利。4勝を先勝したほうが日本シリーズ進出という条件で、2勝0敗という圧倒的に有利な立場となりました。

しかし、第2戦はベイスターズ先発の濱口が粘りの投球をみせ、打線も奮起してカープ先発野村を打ち崩し、6-2でベイスターズが勝利。ここからベイスターズの逆襲が始まりました。

さらに、続く第3戦をベイスターズは7人の投手で継投。投手戦を制して1-0で連勝しました。これで対戦成績2勝2敗のタイに。ベイスターズ先発井納が自ら決勝タイムリーを放つなど、流れがベイスターズに傾きつつある雰囲気です。

第3戦のあとは雨が続き、雨天中止で2日流れました。これで流れが変わるケースもありますが、ベイスターズの勢いは止まりません。

2017横浜ベイスターズ-クライマックスシリーズ下克上

第4戦はカープが初回にいきなり丸の2ランなどで3点を先制。しかし、ベイスターズが4回に筒香のソロホームラン、続く5回に桑原、ロペスのタイムリーで逆転に成功。7回からは今季勝ち頭の今永を中継ぎで起用し、7、8回とカープ打線を零封するなど、投打がかみ合いました。

一方のカープは対照的な内容。初戦で5回無失点だった薮田が、この試合4回0/3を投げて4失点で降板。打線もダブルプレーを3つ喫するなど、拙攻が目立ちました。これでベイスターズが日本シリーズ進出に大手。

背水の陣となったカープは、第5戦またもや初回に丸、バティスタのタイムリーで先制します。しかし、ベイスターズはこの試合でも2回から5回まで4イニング連続で得点をあげ、あっさりと逆転に成功。さらにその後も3点をくわえ、一気にカープを突き放します。結局、ベイスターズ打線は計5本のホームランを含む16安打でカープを圧倒し、9-3で第5戦に勝利して、対戦成績4勝2敗で日本シリーズ進出を決めました。

カープはペナントレースで2位阪神に10ゲーム差をつけ、今季ぶっちぎって優勝しましたが、対戦成績をみると、唯一ベイスターズにだけ負け越しています(12勝13敗)。アドバンテージの1勝はありましたが、相性は五分。むしろ、苦手意識があって、短期決戦ではもっとも対戦したくない相手だったのでは。

短期決戦の流れを引き寄せたラミレス監督の名采配

シーズン143試合、期間にして約7ヶ月もの間戦い抜くペナントレースとは異なり、クライマックスシリーズは超短期決戦です。

能力のある選手が調子が上がらないため、我慢して使い続けるということをペナントレースではよく見聞きしますが、わずか3戦、7戦という短期決戦ではそんな悠長なことはしていられません。

昨年日本一になった北海道日本ハムファイターズ・栗山監督の采配は、クライマックスシリーズ、日本シリーズの短期決戦で正に効果的でしたが、同様に今回のクライマックスシリーズで短期決戦としての采配が冴えていたのはベイスターズ・ラミレス監督でした。

2017横浜ベイスターズ-クライマックスシリーズ下克上

打線の入れ替えなどはシーズン中から見られましたが、とりわけ、短期決戦としての投手継投に妙を見ることができました。

そのひとつがファイナルステージ第4戦。1点のリードを守るために計7人の投手で継投し、強力カープ打線を3点に抑えることに成功したゲームです。特に、7回に今永を投入したところにラミレス監督の才能がうかがえます。

対戦成績2勝2敗とし、第4戦は日本シリーズ進出に王手をかける大事な一戦。6回終了時点で4-3とリードし、9回のマウンドを託すクローザー山﨑につなぐまでの7、8回をどう抑えるかという点がポイントでした。ここで左のエース今永を送り込むという采配にラミレス監督のセンスをみます。

2017横浜ベイスターズ-クライマックスシリーズ下克上

ふつうであれば、シーズン中の勝ちパターンを崩したくないというのが監督の心理でしょう。結果的にそれでも抑えることができるのかもしれませんが、シーズン中にはない短期決戦特有の選手起用をすることで、選手にも緊張感を与えられるでしょうし、勝負をかけていることも伝わるはずです。何より相手が面食らい、まともに準備ができないという奇襲効果もあります。この場面は3勝目がかかった大事な一戦の勝負どころであり、0点で抑えるもっとも確率の高い投手をラミレス監督が起用したと判断できます。

同様に、第5戦の先発石田が初回に2失点を与えたところでも早々に継投に入っています。第2戦で先発した濱口を三番手で起用するなど、ここでも大胆なアイデアを実行しています。それぞれの場面で英断したラミレス監督の采配は当然評価されるべきものですが、その起用に応えた選手がそれ以上に素晴らしかったといえます。

「短期決戦では普通の人が考えないようなアイデアが重要」と語っているように、ラミレス監督は相手より先に動くことで相手の勢いをそぎ、自軍が優位になる流れをつくる戦術をとっています。少なからず、この戦い方は他のチームも参考にする風潮が出てくるのではないでしょうか。

written by 空リュウ

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