【小説】湊かなえ「告白」を読んだ感想・私見

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湊かなえ-告白-小説-感想

湊かなえ作品の中でもイヤミスの代表作として名高い「告白」(2008年刊行)。2009年度の本屋大賞受賞によって、本作の知名度は一気に高まりました。

本作は湊かなえデビュー作にして代表作となったことでも知られ、2010年に主演・松たか子で映画化もされています。

※「読後、イヤな気持ちになるミステリ」の略称・俗語。

主観と客観が交錯する“独白”形式の「告白」

S中学校に赴任する1年B組担任・森口悠子の娘・愛美の死に起因した、5人の「告白」。本作は、登場人物の“独白”を一人称の視点で描写し、全6章(第1章と第6章は同一人物)で構成しています。

一人称の独白は叙述トリックで使われるケースもありますが、本作では主観と客観のギャップを描写しています。やや独善的に語られる独白は、数あるイヤミス作品の中でも、湊かなえならではのあと味の悪さです。ほかの湊作品でもいえることですが、心に何かが刺さるような読後感を覚えます。

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少年Aと少年Bに宣告する戦慄の復讐

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生徒を前にして担任・森口悠子の告白で幕を開ける本作は、第1章が構成上の本章となっています。この独白が第2章以降の独白に影響を及ぼし、少年Aと少年Bの人生をも揺さぶります。

娘の死について宣告(告白)する森口悠子の復讐劇は、並の神経の少年であれば立ち直れないぐらいの衝撃でしょう。

思い込みによって歪んでいく何か

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一人称の独善的視点によって、章ごとの告白者の主観的な視点と、別の人物から見る主観的な告白(別の告白者から見ると「客観」)にずれが生じています。そのずれはまさに思い込みによるずれですが、それによって少年Aと少年Bの人生は歪んでいきます。

そこに面白さを見出せれば、本作は受け入れられるのではないでしょうか。逆に何も感じないのであれば、嗜好が違うということで片付けてしまうしかありません。

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フェイクかリアルか──

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一人称の独白により、所どころにフェイク(虚言)が含まれています。おそらくここがフェイクだろうというのは察しがつくと思いますが、告白者は、相手にリアルだと思わせることで他力本願の陰謀を仕掛けていきます。

その陰謀が引き金になって、徐々に壊れていく大切なもの──。一人称で語られる独白によって、崩壊していく様が告白者視点で描かれています。

個人的にはいくつか釈然としない箇所はありますが、ラストのシーンなどは“物理的な事象がクリアできればリアル、できなければフェイク”という解釈でもいいのかなと不承不承消化しました。

written by 空リュウ

告白 (双葉文庫) 湊 かなえ
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