[スポンサーリンク]
2008年に刊行された楡周平「プラチナタウン」。
本作は、2012年にWOWOW連続ドラマWでドラマ化(主演・大泉洋)もされています。
個人的に、時おり何気に読みたくなる経済小説、または社会派もの。中でも楡周平作品は「Cの福音」や「クーデーター」などスリラーもので醍醐味を味わっていたので、経済小説でも未知のストーリー展開に魅せられ、好んで手にとっています。
本作の帯にもコピーがありましたが、“伊吹文明・元衆院議長が石破茂地方創生大臣に薦めた本”としても知られています。
以下は本作を考察するにあたり、ネタバレを含む表現になっています。
[スポンサーリンク]
現代社会の問題をもフォーカスする「プラチナタウン」
財政破綻寸前の故郷・緑原町を、どうにかして財政再建させようというのが本作の根幹。その町長に抜擢されるのがエリート商社マンの山崎鉄郎という設定ですが、そこに至るまでにひと悶着あるのが楡作品らしい展開です。
本作に登場する人物の中でキーマンとなっているのが、山崎をサポートする同級生の熊沢。ガリバー・パニックに登場する主人公のような、憎めないキャラ設定になっています。
この二人が中心となって故郷・緑原町の財政危機に立ち向かっていくというのが本作のプロットです。
[スポンサーリンク]
高齢化社会に投げかける発想の転換
本作の舞台となっているのは高齢化と過疎化が進む東北の片田舎ですが、東北に限らず、日本国内のアクセスの悪い地方自治体は同様の問題を抱えています。
また、箱物行政と揶揄される、公共施設をやたらと建設しているのも地方自治体のとある傾向。そこには多額の運営費がのしかかっています。
これが本作に登場する山崎の故郷を財政破綻させるに至った根源となっています。そのバックに暗躍する町議会のドン・鎌田。議会をまとめて施策として実行できるか、この鎌田と山崎のかけ引きも本作を構成する重要なファクターです。
[スポンサーリンク]
起死回生の“プラチナタウン”構想
“田舎にはなく都会にはあるもの”といえば、きりがないほど多くの事例をあげることができます。そしてそれらを求めて若者が都会に出ていくというのが高齢化および過疎化の原因ともいえます。
ただ、発想を転換すると、少なからずその逆も事例が存在します。
豊富な海の幸や山の幸、釣りやキャンプなどのレジャー、その土地ならではの芸術文化など、都会にはない田舎の良さ。紆余曲折あったものの、山崎と熊沢はそこに着眼するに至り、都会にはない田舎ならではの長所を財政再建の切り札にできないか、という発想の転換が本作の肝になっています。
[スポンサーリンク]
余生を快適に過ごせる街“プラチナタウン”という壮大なプロジェクトであるだけに、いざ着手というところまでの経緯がとんとん拍子で進むので、現実離れしている感は正直否めません。
ただ、そこは目を瞑ったとして、問題山積の現代社会を投影した作品であることは疑いがなく、一読の価値がある傑作ということに相違ありません。
written by 空リュウ
[スポンサーリンク]