【連続ドラマW】「石つぶて」(主演・佐藤浩市)を観た私見・感想

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連続ドラマW-石つぶて-感想

WOWOW連続ドラマW「石つぶて」(2017年、主演・佐藤浩市)は、ノンフィクション作家・清武英利が書き下ろした「石つぶて 警視庁二課刑事の残したもの」を映像化した作品です。

同著者作品の連続ドラマW映像化は「しんがり」(2015年、主演・江口洋介)に次ぐ2作目。

タブーとされていた外務省の報償費(機密費)が題材になっている点からも、連続ドラマWならではの緊張感のある描写が続く作品に仕上がっています。本作(原作)は実際に起きた外務省機密費流用事件が題材であることから、以下は一部ネタバレを含む表現になっています。

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無骨な刑事「石つぶて」がつらぬいた信念とは

警視庁捜査二課第一知能犯情報係──。新たに赴任した係長・警部の斎見(江口洋介)と、その部下である主任・警部補の木崎(佐藤浩市)、この二人の直属の上司である課長・警視正の東田(萩原聖人)が本作を動かす当部署の主要キャストです。

徹底して信念を貫く無骨な刑事の木崎は、他人の意見にほとんど耳を貸さず、ひたすら己の信じる道を突き進みます。芯の通った人物の斎見でさえ拒絶する様は、十分すぎるほど堅物な印象を与えます。とりわけこの二人が枠に収まらないため、年下上司役として舵をとる東田(萩原聖人)の低姿勢で生真面目な面が際立ち、三者の関係が絶妙なトライアングルを描いています。

それぞれの立場から個が放つ存在感

連続ドラマW-石つぶて-感想

折しも九州沖縄サミットが開催されている最中、木崎が足しげく通う元国会議員・溝口(津嘉山正種)から、外務省ノンキャリア職員に贈収賄容疑がかかっていることを知らされます。

過去の苦い経験から上司にも情報を共有しない徹底ぶりの木崎と、木崎がヤマに近づこうとしていることを確信している斎見が動き始めることで、徐々に裏取りの捜査が展開されていきます。

木崎役である佐藤浩市の重厚な存在感は、終始一定の緊張感を保つ礎となり、斎見役の江口洋介の熱演は作品に活気をもたらせています。

この両キャストに劣らず、名演で個を放っているのが疑惑の外務省ノンキャリア職員・真瀬(北村一輝)。仕事に対するそつのなさ、周囲とのコミュニケーション力、女性へのマメさなど、悪徳職員でありながら、デキる男というイメージを北村一輝が見事に演じています。

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報償費という名の錬金術

連続ドラマW-石つぶて-感想

捜査の過程で浮上する一ノンキャリア職員の巨額の遊興費。総額10億にものぼる資金はすべて親の遺産であると主張する真瀬を、木崎と斎見が追い詰める取調べシーンは本作の見どころの一つ。

「殺されますよ」

追いやられた真瀬が吐くこの台詞には、思わず息を呑むような凄みがあり、背後にいる大物を想起させる効果があります。

外務省ノンキャリア職員としては権力に忠実で職務も無難にこなすものの、一方では愛人への資金援助や競走馬の購入など、大金を湯水のように惜しげもなく乱費するという二面性。報償費の着服という錬金術に手を染める人間でありながらも、愛人や周囲への気配りができる真瀬は、どこか人間臭さや愛嬌を感じる奇妙な人徳も持ち合わせている人物なのかもしれません。

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抗うことができない巨大な壁

連続ドラマW-石つぶて-感想

結局真瀬を横領罪で起訴することはできず、落としどころを詐欺罪にもっていかれるあたりは、現実の事件同様、憤りとやるせなさを感じる本作の核心部分。

木崎の説得も虚しく公判でも真瀬はすべてを語ることはありません。これによって真相は闇に葬られることになり、“石つぶて”たちに抗えない壁が立ちはだかっていることを痛感します。

作中で頻繁に登場する隠語“サンズイ(汚職事件)”が近年減少傾向にあるというのは、浄化されているというよりはむしろ、事が巧妙化されて発覚しづらくなっているのではという邪推にたどり着くのが自然。

ラストに女性刑事・矢倉(飯豊まりえ)が一石を投じる逸話が挿入されているあたり、“石つぶて”の魂が継承されることを願うメッセージとして受けとれます。

written by 空リュウ

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