【連続ドラマW】「楽園」を観た私見・感想

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連続ドラマW-楽園-感想

WOWOW連続ドラマW「楽園」(2017年、主演・仲間由紀恵)は、原作・宮部みゆきの同名小説を映像化した作品です。

本作は、累計発行部数420万部を突破した「模倣犯」の事件から9年後という設定で描かれたもので、映像化作品としては本ドラマが初。

「模倣犯」の登場人物(前畑滋子)を主人公とした作品ということで耳目が集まりました。

人が追い求める“楽園”とは

模倣犯の事件から完全には立ち直れず、いまだトラウマを抱えているルポライター・前畑滋子(仲間由紀恵)は、あることをきっかけに16年前に起きた殺人事件を調査することになります。

自宅の火事を機に、16年前に娘を殺害して床下に埋めたと自ら名乗り出る土井崎元(小林薫)が、本作のキーパーソン。土井崎家の人間が、何を思い、何を行ってきたのか。過去の事件と新たに起こる事件が密接に絡み合い、それに関わる人間模様が色濃く描かれています。

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過去と現在をつなぐ少年の特殊能力

連続ドラマW-楽園-感想

人知を超えた力、つまり、科学的には説明できない不思議な力をもつ少年・萩谷等(黒澤宏貴)が展開の起点となっています。その特殊能力は、“他人の記憶が見えるのかもしれない”というもの。

この少年を子にもつ母親・萩谷敏子(西田尚美)からの依頼で、少年が描いた絵について滋子は調査することになります。

その絵は土井崎家の殺人事件が発覚するより前の段階で描かれたようですが、まるでその事件を予見していたかのように描写が酷似しています。

等の特殊能力は、他人の記憶が見えるという設定のため、実際は“予見”ではなく、“見たままの事実”を描いたことになります。

この記憶は誰の記憶なのか──。

“他人の記憶が見える”という非科学的な設定にやや興ざめする感があるものの、この一枚の絵をもとに、新たな人間関係がみえてくることになります。

事件の真相へとたどる人間関係

連続ドラマW-楽園-感想

一枚の絵をもとにつながる新たな人間関係、それは16年前に殺害された土井崎家の長女・茜(伊藤沙莉)に起因しています。

素行の悪かった茜は、自宅周辺でも噂になるほどの存在。荒れていった理由のひとつに、当時、両親の愛情が次女・誠子(夏帆)に傾倒していると錯覚していた向きもありますが、それ以上に茜を大きく狂わせた要因は交友関係にあります。

入念な調査を続けていた滋子は、この茜の交友関係に何か手がかりがあるとにらみ、危険な領域へも踏み込んでいきます。それは依頼人からの望みにこたえた行動でもありますが、それ以上に、元の自白に違和感を覚えたことにより、真実が知りたいという自らの探究心が勝った結果でもあります。

たどり着いた先に見たおぞましい光景は、はたして最悪のケースが現実となってしまった痕跡なのか──。

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家族を守るために決断した何か

連続ドラマW-楽園-感想

父・元が家族を守るために決断したもの。

それは第三者にはふれることのできない心の深淵に秘められています。

守る側、守られる側で、おのおのの見解は180度かわってくることも多々あります。そして、相手を慮る気持ちは理解されないということも往々にしてあります。それがちょっとした誤解であれば傷も浅くすみますが、もし生じた誤解に明かせない理由がある場合、悪化した関係を一生ひきずってしまう事態にもなりかねません。

ラストに明かされる真実には、家族を守り通そうとしている元の信念が垣間みえます。

理想として描いた家族が安らげる場所──。それは彼自身にしかみえない、誰にも侵食されることのない守られた聖域だったのかもしれません。

written by 空リュウ

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