【連続ドラマW】「パンドラIV AI戦争」(主演・向井理)を観た私見・感想

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連続ドラマW-パンドラⅣ-感想

WOWOW連続ドラマW「パンドラⅣ AI戦争」(2018年、主演・向井理)は、シリーズ化されている「パンドラ」の4作目にあたる作品です(スペシャルドラマ版は除く)。シリーズを通して脚本を手がけるのは「白い巨塔」などで知られる井上由美子。

パンドラシリーズ1作目から共通しているプロットは、“禁断の箱は、希望の光となるのか、それとも絶望の淵へ沈んでしまうのか”という儚い因果。そして、その利権に群がる人間の欲望も赤裸々に描かれています。

*以下は一部ネタバレを含む私見・感想です。

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解き放たれたAI医療「パンドラⅣ AI戦争」

主演・向井理が演じる医師・鈴木哲郎が本作AI医療のキーパーソン。鈴木の開発した医療用AI「ミカエル」が、いわば禁断の箱から解き放たれた“混沌”です。これが本作の“希望の光”となっています。

脇をかためるキャストとして、開発者鈴木を取り込むIT企業代表・蒲生俊平役に渡部篤郎、AI導入に反対する医師会会長・有薗直子役に黒木瞳、鈴木をサポートする看護師・橋詰奈美役に美村里江、弁護士・東浩一郎役に三浦貴大、優秀な心臓外科医・上野智津夫役に原田泰造、毎朝新聞記者・太刀川春夫役に山本耕史という面々。太刀川記者役の山本耕史はパンドラⅠ~Ⅲにも出演している固定キャストです。

今回も主人公となる人物の姓は“鈴木”で、これはⅠから継続。また、ナレーションも引き続き継続出演の山本耕史がつとめています。

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パンドラⅣのフレームワークは

連続ドラマW-パンドラⅣ-感想

パンドラシリーズは常に究極のテーマを扱っていますが、本作Ⅳの「AI医療」は、医師の長時間労働、地方の医師不足など、現代社会でも起こっている問題を鑑みても、時代に合ったテーマといえます。

個人的にはパンドラシリーズのテーマは毎回興味深く、連ドラWの中でもとりわけ好みの作品。本作Ⅳも、観る側が期待するクオリティの範疇にうまく収められています。

Ⅰ以降、パンドラシリーズでは利権に絡むパワーバランスがつきものですが、本作Ⅳでも、AI医療推進のために蒲生が厚生労働大臣(升毅)の後ろ盾を得ようとし、医師会会長の有薗がそれを阻止しようとする権力の相関が描かれています。蒲生が闇社会の人間に狙撃されるなど、ダーティーなシーンも。

キャストも相応の顔ぶれでそれぞれが適役。登場シーンが多いことにも比例していますが、渡部篤郎がもつミステリアスさ、三村里江の好演が要所で作風を引き締めています。個人的には、上野医師役・原田泰造の配役も徐々に馴染みましたが。

一方で違和感があったのは“希望の光”の設定。IT企業ノックスグループ代表の蒲生が、鈴木という一人の人間を抱き込んでAI医療で日本を席捲しようとするのは作品の性質上やむを得ない構成ですが、医療用AIミカエルを鈴木単独で開発している様は、非現実的でどうしてもチープに映ります。AI医療の初期段階とはいえ、セキュリティも考慮するとそれなりの規模のシステムになるはずで、ビジュアル的にも相応の開発人員を配置し、小規模ながらもデータセンターぐらいは構えてほしいところ。

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“AI戦争”のあとには

連続ドラマW-パンドラⅣ-感想

本作Ⅳでは問題提起の一つとして、「AI診断にもとづく施術方法と、執刀医の上野が判断した施術方法に相違が生まれ、結果患者が死亡する」という事件の経緯が描かれています。

ここで鈴木と上野の間に確執が生まれ、いわゆる「名医といわれる医師の判断さえもAI医療には必要ないのか」というAI医療の体制の是非について問うという流れ。パンドラシリーズらしい着想です。

また、もう一方の側面では「蒲生に対するAI診断が誤診だった」ことも判明し、この事実を鈴木自らが公表しています。AIそのものが意思をもち、失敗を重ねることでAIが自ら学んでいくという、開発者でさえも予期できないプログラム。この仕様ではとても国家プロジェクトとして推進できるものではないとの観点から、“AI戦争の休戦”を落としどころとしています。

「医療用AIは完璧ではなかった」という方向に話をもっていきたいのは理解できますが、強引に感じるこの展開は、ケレン味の利いた演出から突如シャットダウンされたような印象を受け、残念ながらやや粗さが残っています。

エンディングもパンドラシリーズの定番の流れ。“希望の光は結局絶望の淵へ沈んでしまうのか”という描写です。本作Ⅳでも、AI医療が空中分解した状態で、1年後のエピローグが描かれています。

一部ディテールに突っ込むところはありますが、作品全体としては本作Ⅳもクオリティは確か。AIを題材とするテーマは異分野にもあるため、今後のパンドラシリーズでAIモノが再登場するのもアリではないでしょうか。

written by 空リュウ

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