【小説】貫井徳郎「慟哭」の叙述トリックを考察

貫井徳郎-慟哭-叙述トリック-考察

1993年に刊行された傑作ミステリ貫井徳郎「慟哭」。

本作は同作家のデビュー作であり、代表作のひとつにも推される名作です。同作家特有の重厚な描写は、デビュー作でその礎を築いています。

プロットも秀逸。連続少女誘拐事件を背景に、当該事件の陣頭指揮を執る警視庁捜査一課長・佐伯。心の隙間を埋めるべく新興宗教に救いを求める“彼”・松本。この二者の視点を中心とし、それぞれの章でストーリーが展開されています。

本作はミスリードを誘う叙述トリック作品です。その叙述トリックを検証するため、以下は読了前提としてネタバレで考察しています。

時系列に潜むミスリード「慟哭」の叙述トリック

奇数章で描写される“彼”・松本の心情、偶数章で展開していく警察捜査本部の俯瞰。偶数章はいうまでもなく佐伯を中心として描かれています。

偶数章が本作の軸となって進んでいくため、一見、奇数章は本編とはかけ離れたストーリーのように感じます。読み進めていくうちに、新興宗教に没頭していく松本はどこで本編に交わってくるのか、という疑念が頭をもたげます。

続発する少女誘拐事件の時系列は──

貫井徳郎-慟哭-叙述トリック-考察

計7人もの少女が消息を絶った連続誘拐事件。

佐伯の章と松本の章でそれぞれ描写されていることもあり、同時期に事件が発生しているかのように誤認してしまいがち。

しかし、作中でも掲示されていますが、時系列でみると奇数章と偶数章は同時期ではありません。正確な時系列は、偶数章の佐伯編が先であり、奇数章の松本編が後です。

この時系列の差異が、本作の叙述トリックの根幹になっているため、これによって自ずとみえてくるものがあります。

新興宗教に執心する信者としての“松本”

貫井徳郎-慟哭-叙述トリック-考察

娘を失ったことによって空虚な精神状態となり、心に開いた穴を埋めるべく新興宗教に執心していく“彼”・松本の視点で、奇数章は描写されています。

本作の本編のように映る偶数章と交互に読み進める奇数章は、どこかスピンオフのような、奇異な印象を読み手に与えています。

娘を亡くした正体不明の松本という人物が、ついには黒魔術を盲信し、依代として生身の身体を求めて少女を次々と殺害していくさまは、偶数章で続発している事件の犯人を連想させます。しかし、どうにも辻褄が合いません。

そして、早い段階で頭をよぎる「彼(松本)は佐伯ではないか」という憶測も、時系列の差異によって読み手に混乱を生じさせます。

いずれにおいても、時系列の差異に気づかず、先入観で同時進行のストーリーとして読み進めているうちは、きっちりミスリードしていることになります。

事件解決につとめる捜査一課長としての“佐伯”

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偶数章の佐伯編は、警視庁捜査一課長という立場から、連続少女誘拐事件の被疑者検挙に尽力する一連の俯瞰が描写されています。

時系列で先の偶数章において、佐伯は捜査する側の人間。三件の連続少女誘拐事件を追いかけている最中、自らの娘が4人目の犠牲者となってしまうシーンが偶数章のラストです。

時系列でいう、「偶数章のラスト以降、奇数章の冒頭まで」の空白の期間は作中で描写されていません。この空白の期間に変化があったと想定されることは、「佐伯が辞職し、姓を旧姓(松本)に戻した」ということでしょう。

これらのことから構成がわかりますが、時系列で先になっている偶数章の連続少女誘拐事件と、時系列で後になっている奇数章の連続誘拐事件はまったく別の事件であり、被疑者も異なります。つまり、本作は、時系列も被疑者も異なる、まったく別の二つの事件を描いた作品です。

以下は推測にすぎませんが、著者は、意図的に「松本=佐伯」という連想を早い段階で読み手に意識させているのでは。叙述トリックの伏線もあからさまに掲示しているところからも、ミスリードを誘ってミステリとして成立させつつも、メッセージは別にあるのではないでしょうか。

それは、捜査一課の刑事・丘本の分析力、捜査一課長・佐伯の洞察力、娘を奪われた父・松本の慟哭などの重厚な描写が、本作の核心を物語っているのかもしれません。

written by 空リュウ

慟哭 (創元推理文庫) 貫井 徳郎
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【小説】貫井徳郎「修羅の終わり」の叙述トリックを考察

貫井徳郎-修羅の終わり-叙述トリック-考察

1997年に刊行された長編ミステリ貫井徳郎「修羅の終わり」。

連続交番爆破事件を背景に、公安刑事とそれに従うスパイに絡むサスペンスが本編となり、章ごとにそれぞれ三者の視点からストーリーが展開されていく秀作。とくに公安内部の事象が陰鬱としていて色濃く、フィクションと理解していながらも、どこか現実世界の逸話を描いているようにも感じるほど描写にリアリティがあります。

本作は、叙述トリックによって読み手をミスリードへ誘う傑作です。巧みな叙述トリックに誰もが掛かり、読後、釈然としないモヤモヤ感が残るのは必至。その叙述トリックを検証するため、以下は読了前提としてネタバレで考察しています。

巧みな叙述トリックでミスリードへ誘う「修羅の終わり」

己の信念にもとづいて正義を貫こうとする公安新米刑事・久我。強欲を押し通して意のままに生きる所轄の悪徳刑事・鷲尾。そして、歌舞伎町の路上で目覚め、記憶喪失になっていることに気づく青年・“僕”。

この三者の視点からそれぞれのストーリーが展開されていきますが、本作の叙述トリックを考察するうえで核心となるのがそれぞれの時代背景(年代)です。

本作はいわゆる犯人探しの推理ものではありません。また、ミスリードを誘う叙述トリックそのものを見誤ってしまうと、本作の醍醐味を見失うことにもなりかねません。三者がそれぞれどこでつながるのかを見極め、叙述トリックに隠された真実にたどり着くところに妙味があります。

第1の視点 公安新米刑事「久我恒次」

貫井徳郎-修羅の終わり-叙述トリック-考察

久我の視点から本筋が展開されていくため、まずはこの年代が重要です。これがいつなのか。読み進めていくと時代背景が掲示されていますが、第1の視点・久我の章は“1970年代初め”であることがわかります。

久我の章は主に公安の内部が描写されていますが、とりわけ上司である藤倉の存在が大きく、藤倉は他の視点(章)ともつながる可能性のある重要人物と考えられます。

そして久我の視点を考察するうえで欠かせないのが「斎藤」の存在。本作の叙述トリックは“斎藤に始まり斉藤に終わる”といっても過言ではないほど。斎藤には姉がいますが、この「姉弟」という設定が第1と第3の視点で鍵になっています。藤倉の指示によって、懲罰のため久我に強姦された女は、はたして誰なのか(後述)。

第2の視点 所轄の悪徳刑事「鷲尾隆造」

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第2の視点・鷲尾の章は、一見したところ第1と第3の章とは関連性のない、切り離されたストーリーのようにも感じます。読み手は久我と同じ時代と思い込んで読み進めていくはずですが、実はこの年代は“1990年代初め”です。

己の欲望のまま突き進むその卑劣な素行は、鷲尾という人物を悪徳刑事として描くことに成功しています。そのため、問題のある鷲尾の素行は、警察内部でも目をつけられて当然という描写に違和感を覚えません。

あらぬ容疑で懲戒免職処分となる鷲尾は、誰の手によって罠に嵌められたのか。仮にこれが公安の仕業だったとすると、腑に落ちる構成です(後述)。

そして、無職となり、警察へ恨みを募らせる鷲尾に近づく人物・白木の登場。この人物が第2の章と第3の章を結びつける鍵になるのではないかと推測します(後述)。

第3の視点 記憶喪失の青年「真木俊吾」

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3つの視点の中でもっともミステリアスな存在が、記憶喪失の青年“僕”です。

小織から発信される「斉藤拓也」のフェイクによって、この記憶喪失の青年が、第1の視点に登場する「斎藤」と重なり、読み手を混乱させます。

強引に辻褄を合わせようとすると、どうしても無理が生じ、ファンタジーを連想せざるを得ない矛盾を感じてしまいます。また、“自殺した姉”という存在も「斎藤」と“僕”を混同させる一因として設定されています。

しかし、第3の視点は「真木俊吾」に相違なく、「斉藤拓也」でも「斎藤」でもないことが作中で掲示されています。そして、最後の一行によってつながる第1の視点と第3の視点。それを紐解くと、藤倉の指示によって久我に懲罰(強姦)され、自殺へと追い込まれた女は、“僕”の姉、つまり真木俊吾の姉ということになります。

この事実により、“真木俊吾には久我に対する復讐の念が生じている”という正当性が掲示されたことになり、読み手に「斎藤と久我」というイメージを強く与えている裏で「真木俊吾と久我」が紐づけられていたことを明らかにしているといえます。よって、第3の視点である記憶喪失の青年・真木俊吾の章は、第1視点の久我と同じ“1970年代初め”と位置づけられます。

白木という男、山瀬という存在

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本作の展開においてきわめて重要な存在でありながら、その素性が明かされない人物が二人登場しています。

懲戒免職になった元刑事・鷲尾を扇動する白木、姉が警察官(久我)によって乱暴されたことを弟・真木に明かす山瀬です。

以下は推測ですが、構成的には辻褄が合うと考えられるので、個人的には消化不良は起こしていません。

第1の視点と第3の視点でつながる“1970年代初め”に登場している山瀬は、久我によって制裁を受けた藤倉と仮定します。藤倉でなければ知り得ない、真木の姉の情報を、赤裸々に語っている点からもその可能性は高いと考えます。

藤倉は山瀬という偽名をつかって真木に近づき、久我から受けた屈辱を、自分の手を汚すことなく復讐しようと試みたと考えられます。真木自身にも姉の復讐という大義があるため、藤倉からすると懐柔しやすい相手になります。

真木に強襲された久我の生存は不明ですが、真木のその後は推測できるのかもしれません。それは白木という人物の存在に依存します。

白木は鷲尾にコンタクトをとっていることから、1990年代初めに存在していることが掲示されています。この白木を、偽名をつかって鷲尾に近づいた真木と仮定します。

久我への復讐を試みた真木は、警察の網にかかることなく逃げ延び、警察組織へ復讐の念を燃やすテロリストを束ねる要注意人物へ変貌したと考えられます。

実はこれは藤倉(公安)の陽動作戦であったと仮定すると、その狙いは、真木を泳がせることで警察組織に私怨のあるテロリストを仕立て上げることにあったと推測できます。そしてそれは、警察の裏で手を引いていたのは公安だったという暗示になり、鷲尾は公安に嵌められたと考えられます。

そう推測すれば、おぼろげながら全体像がみえてくるように感じます。

written by 空リュウ


【充電式電池】ダイソー充電池「ReVOLTES」を他社充電池と比較

100均充電式電池チャージャー-2017ダイソー

ダイソーで販売されている充電式ニッケル水素電池「ReVOLTES」(100円)。繰り返し使えるという点で経済的に感じる充電式電池が、100均で買えるということに思わず魅力を感じてしまいます。実際のところ、ダイソーの“充電池”は必要にして十分な性能を備え、コスパが良い商品なのか、他社製品と比較して考察してみました。

100均ダイソー充電池「ReVOLTES」を他社充電池と比較

知っているのと知らないのとでは、使い分けという点でも大きく違ってくるため、まずは電池の種別について確認してみます。

ふだんは聞きなれないワードですが、電池の種類には「一次電池」と「二次電池」があります。一次電池は使い切りタイプのものをいい、二次電池は充電して繰り返し使えるタイプを指します。

100均充電式電池チャージャー-2017ダイソー

古くから使われている使い切りのマンガン乾電池やアルカリ乾電池などは一次電池です。充電式の二次電池には、ニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池があります。

ダイソーの充電池ReVOLTESはニッケル水素電池ですが、分類すると以下のようになります。

1.一次電池(使い切り)

  • マンガン乾電池・・・1.5V。小電力で長時間使用向き。使い続けると電圧が下がるが、休ませると電圧は回復する。用途:置き時計、リモコンなど。
  • アルカリ乾電池・・・1.5V。大きな電力を必要とする機器向き。マンガン乾電池の2倍以上長く使える。用途:ポータブルDVD、デジカメなど。

2.二次電池(充電式)

  • ニカド(ニッケル・カドミウム)電池・・・1.2V。安定した電圧を供給し、500回程度の充電が可能。デメリットとして、放置による放電、継ぎ足し充電による充電容量の低下などがある。近年減少傾向。
  • ニッケル水素電池・・・1.2V。安定した電圧を供給。ニカド電池と同様のデメリットがあるものの、開発が進み欠点幅は縮小。ニカド電池の倍以上の充電容量がある。
  • リチウムイオン電池・・・3.6V。高い電圧を供給でき、500回以上の充電が可能。小型化、軽量化が進む。用途:ノートPC、携帯電話など。

ダイソー充電池「ReVOLTES」と他社充電池のコスパ比(単3形)

ダイソーの充電式ニッケル水素電池ReVOLTESのコスパはどれほどのものなのか、他社製品の充電池(単3形)と比較してみます。

まずはReVOLTESですが、単3形のパッケージには以下の表記があります。

電圧:1.2V
充電容量:1,300mAh
充電可能回数:約500回

同種の他社商品として、eneloop(Panasonic)、amazon basics(Amazon)、LADDA(IKEA)の単3形を比較検討してみます(1,000円超の大容量モデルは割愛)。

いずれの数値もメーカーが掲示している数値です(2017年12月現在)。価格は税込。

LADDA500:399円(4本)/ 500mAh / 約1,500回使用可能
ReVOLTES
:432円(4本)/ 1,300mAh / 約500回使用可能
LADDA2450:799円(4本)/ 2,450mAh / 約500回使用可能
amazon basics:884円(4本)/ 1,900mAh / 約1,000回使用可能
eneloop(スタンダード):982円(4本)/ 1,900mAh / 約2,100回使用可能

ReVOLTES以外は4本セットの価格のため、単価にすると以下になります。

  • 単価
    LADDA500:99.8円
    ReVOLTES:108円
    LADDA2450:199.8円
    amazon basics:221円
    eneloop:245.5円

コスト面では、1本単価が最も安いのはLADDA500の99.8円。次いでReVOLTESの108円です。単価だけ見ると、eneloop(スタンダード)の245.5円はややコスト高に感じるかもしれません。

次に、充電容量と使用可能回数についての対比です。ここでは単純な机上の計算として、「充電容量×使用可能回数」で強引に数値化してみます。必ずしも正確な数値ではないため、あくまで試算値(mAhはAhで試算)。

  • 1本あたりの生涯充電可能容量(仮称)
    eneloop
    :1.9Ah×2,100回=3,990Ah
    amazon basics:1.9Ah×1,000回=1,900Ah
    LADDA2450:2.45Ah×500回=1,225Ah
    LADDA500:0.5Ah×1,500回=750Ah
    ReVOLTES:1.3Ah×500回=650Ah

充電容量ではLADDA2450の2.45Ah(2,450mAh)が目を引き、使用可能回数で群を抜いているのがeneloop(スタンダード)の約2,100回です。次いでLADDA500の約1,500回ですが、充電容量が0.5Ah(500mAh)しかないので、これはマイナス査定の対象でしょうか。

コスパを対比するため、さらに強引に、上記数値を単価で割ってみます。

  • 1円あたりの生涯充電可能容量(仮称)
    eneloop
    :3,990Ah÷245.5円=16.3Ah
    amazon basics:1,900Ah÷221円=8.6Ah
    LADDA500:750Ah÷99.8円=7.5Ah
    LADDA2450:1,225Ah÷199.8円=6.1Ah
    ReVOLTES:650Ah÷108円=6.0Ah

もし仮にこの数値を鵜呑みにするならば、コスパが良いのはダントツでeneloop(スタンダード)ということになります。amazon basicsの約2倍の数値です。どこまでを誤差とみるかにもよりますが、eneloop(スタンダード)以外は費用対効果で大差がなく使えるということになるのでしょうか。とすれば、もっとも数値の低いダイソー充電池ReVOLTESも、4本432円という価格は、安価で手にしやすいとみてもいいのかもしれません。

ニッケル水素電池ReVOLTESの充電器は?

繰り返し使えて便利な充電池ですが、ダイソーでは、ニッケル水素電池ReVOLTESの充電器「Ni-MH専用充電器」も販売されています(100円)。

パッケージには以下の表記があります。

入力電源:AC100V 50/60HZ
出力:DC1.4V 135mA
外形寸法:約45×95×35mm
質量:約104g
使用温度範囲:0~40℃
目安充電時間:単3形 1300mA 約11.5時間、単4形 750mA 約6.5時間
使用可能回数:約500回

135mA出力なので、単3形 1300mAの容量をフル充電するには約11.5時間必要というのは妥当な数値。100円充電器に対して、これを長すぎるとみるか、そんなものだろうとみるかで評価は変わってくるでしょう。

注意点としては、充電開始時に赤いランプが点灯するものの、充電が完了しても消灯しないという仕様。過充電防止機能はありませんが、135mAという出力しかないため、おそらく11.5時間を超過しても早々に過充電になることはないでしょう。もし過充電が気になるのであれば、(過充電による)充電容量の低下防止も考慮して、11.5時間が経過する前に充電をやめても良いと思います。

written by 空リュウ

【連続ドラマW】「コールドケース~真実の扉~」を観た私見・感想

WOWOW-連ドラW-コールドケース-感想

WOWOW連続ドラマW「コールドケース~真実の扉~」(2016年、主演・吉田羊)は、ワーナー・ブラザースから版権を獲得し、“日本版コールドケース”としてリメイクされた作品です。全10話のストーリーは、WB製作のオリジナルを踏襲した内容で製作されています。

神奈川県警捜査一課の警部中隊長・石川百合を演じる吉田羊は、本作が連ドラ初主演ということで耳目を集めました。

解き明かされる未解決事件「コールドケース」

WOWOW-連ドラW-コールドケース-感想

日本版コールドケースの舞台は神奈川県警捜査一課が管轄するエリア。みなとみらい周辺のロケーションも時おり登場します。

石川百合役・吉田羊の脇を固めるキャストに、部下・高木信次郎役の永山絢斗、同僚・立川大輔役の滝藤賢一、同じく金子徹役の光石研、そしてチームをまとめるボス(警視)役に三浦友和という個性的な顔ぶれ。

10話から成るシーズン1は、基本的に1話完結の脚本で構成されています。

コールドケースが映し出す過去

オリジナル版をベースとしている各エピソードは、異なる題材を厳選してリメイクされています。カルト教団、冤罪、猟奇的殺人、虐待など、何十年も未解決のまま時間が経過している事件。

そして、百合を含め、各エピソードで登場する人物は、それぞれ人にはいえない過去を抱えています。とりわけ、最終話で赤松(ユースケ・サンタマリア)と百合が対峙し、緊迫したシーンで明かされる双方の過去は印象深く残ります。

ユースケ・サンタマリアが演じるサイコなキャラクターの設定は、もはや常套ともいえるハマり感。欲を言えば、もう少し人物設定に色をつけて欲しいところ。

コールドケースを解決するチームの色

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各エピソードのストーリーは、それぞれのエピソードごとに主役を立てるのではなく、あくまでチーム・コールドケースとして解決していくという設定で描かれています。

主演・吉田羊を含め、ほかの出演者たちが一様に「やりやすいメンバーで楽しい現場だった」と語っているように、チームの雰囲気がそのままスクリーンに反映されているように感じます。

ただ、それぞれの人物設定がなされてはいるものの、キャラクターとしてのインパクトにやや欠けている印象。刑事というよりはビジネスマンという雰囲気ですが、同時にそのぶん、5人の中では立川大輔を演じる滝藤賢一だけが、キャラが立ちすぎている感も。

日本版コールドケースの立ち位置

他の作品でもいえることですが、原作小説からの映像化や海外版のリメイクの場合、オリジナルのクオリティが高ければ高いほど注文がつきがち。WB製作のオリジナルを見ていない者からすると、日本版は日本版で無難に仕上がっているように感じます。ただ、面白いかどうかと問われるとYESでもNOでもないというのが正直なところ。

また、オリジナルが各エピソードごとにその時代の楽曲を採用しているのであれば、日本版では日本の楽曲を採用したほうが馴染むのでは。シーズン2で改良があるのかどうか。

WOWOW-連ドラW-コールドケース-感想

残念だったのは、連続ドラマWフリークからすると6話完結というパッケージで見慣れているため、1話完結は展開が忙しすぎて、ところどころ描写がチープで雑になっている感覚を受けました。

実現されないだろうとは思いつつ、2話完結や3話完結のエピソードで継続したほうが、日本版コールドケースのクオリティも上がり、シーズン3へとつながるのではと想像します。

written by 空リュウ


【NPB】クライマックスシリーズは必要か廃止か

NPB-プロ野球-クライマックスシリーズは必要か

ペナントレース2位や3位のチームが1位のチームを倒して日本シリーズへ進出するたびに、にわかに熱を帯び始める“クライマックスシリーズ廃止論”。今回も至るところで侃々諤々の議論がなされていることと想像します。

導入後10年以上が経過し、現行の制度のまま継続して良いのか、または改善すべきか、はたまた廃止か──。今一度ペナントレースとクライマックスシリーズのあり方を見直す必要性があるのは間違いありません。

クライマックスシリーズとペナントレースの相関を見直す必要性

2017年ペナントレースは、セリーグでは1位広島東洋カープが2位阪神タイガースに10ゲーム差をつけ、パリーグでは1位福岡ソフトバンクホークスが2位埼玉西武ライオンズに13.5ゲーム差をつけて優勝しました。

現行の制度では、クライマックスシリーズの前に、セリーグ・パリーグの各優勝チームが決定しています。多くのファンが矛盾を感じているのは、「日本シリーズというNPB最高峰の決戦に、リーグ優勝チームが出られない可能性がある」という点でしょう。

現行のクライマックスシリーズは後づけの制度

そもそもクライマックスシリーズは、ペナントレース優勝チーム決定後の消化試合をなくすために考えられた施策でもあります。早い段階で優勝チームが決まり、残りの試合が消化試合になってしまうと、選手は個人成績に走ってしまい、見る側もつまらないゲームになりがちです。そうなると、ファンも球場から足が遠のき、興行的にもよろしくありません。

これを改善するために2004年にパリーグが先行して導入したのがきっかけ。これが興行面でも成功し、セリーグでも2007年に本格導入して現在の制度に至っています。いろんな意見がありますが、ここまで浸透したクライマックスシリーズをなくすという選択肢は、流れに逆行しているように感じます。

前述しましたが、クライマックスシリーズの存在に疑問を抱く意見の多くが、ペナントレース優勝チームが日本シリーズに出れないという矛盾を指摘したもの。現在のクライマックスシリーズが施行されるに至った理由が後づけのものであるため、そもそものズレがそこにあります。

リーグ優勝チームが日本シリーズに進出できる制度とは

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ペナントレースで優勝チームを決定してしまっている以上、現行のクライマックスシリーズの制度では、ペナントレース優勝チームが日本シリーズに進出できない可能性があるという矛盾は消せません。矛盾を解消するには、ペナントレースとクライマックスシリーズの相関を見直さないと成立しないでしょう。

クライマックスシリーズの優勝チームがシーズン優勝チームになる制度に変更するなど、現状の制度を見直さないと今後もこの矛盾は解消されないままです。

クライマックスシリーズとペナントレースの相関はMLBの流れをくんでいることもあり、いま一度、MLBの制度を考察する必要があります。

MLBではポストシーズン(プレーオフ)でリーグ優勝チームを決めるという制度が成立しています。そもそもMLBにはNPBの倍以上のチーム数(30チーム)が存在し、2リーグ各3地区制(5チーム×3地区×2リーグ)で、ポストシーズンへ進出するためにレギュラーシーズンを争います。多くのチームが存在する中、「上位約3割のチーム数でポストシーズンを戦う」という妥当な数字に落ち着いているため、レギュラーシーズンとポストシーズンとの相関も確立されています。

NPB-プロ野球-クライマックスシリーズは必要か

細かくみると、1リーグ15チーム中、ポストシーズンに進出できるのはワイルドカード2チームを含む計5チームです(各地区優勝チームおよび優勝チームを除いた勝率上位2チーム)。その5チームでトーナメント制のポストシーズンを戦ってリーグ優勝チームを決め、リーグ優勝チームがワールドシリーズに進出し、MLBのNo.1を決めます。リーグ優勝チーム同士がワールドシリーズに進出するので、NPBの日本シリーズで起きるような“リーグ3位vsリーグ1位”の対戦はありません。

NPB独自のクライマックスシリーズを

とはいえ、1リーグ15チームあるMLBの制度をそのままNPBに当てはめることはできないでしょう。1リーグ6チームしかないチーム数でMLBの制度を当てはめてしまうと、現行のように半分の3チームでクライマックスシリーズを争うというアイデアになってしまいがちです。

「消化試合をなくし、興行的に盛り上げる」というコンセプトを差し置いて、「そもそも12チームしかないNPBの組織に半分のチームが進出できてしまうクライマックスシリーズは必要なのか」という意見が、クライマックスシリーズ廃止論の中でも多くを占めているのも頷けます。

これらをすべて解決する制度を今すぐ確立することは不可能ですが、クライマックスシリーズを受け入れて制度化するには、少なくともこれまでの概念を刷新しないといけない段階にきているのは間違いありません。

「レギュラーシーズンでリーグの順位を争い、プレーオフで上位チームによるトーナメントによって優勝チームを決める」という制度は、野球以外のスポーツでも広く採用されています。レギュラーシーズンのような長い戦いの中での戦略と、プレーオフのような短期決戦での戦略には当然差異があり、そこにも醍醐味が感じられます。

プレーする側には多くの戦術が求められ、見る側も異なる条件での応援に白熱します。また、特に国際試合では短期決戦での結果が求められるため、国内でも同様の制度を導入して場慣れしておかないと世界レベルから置いていかれます。

NPB-プロ野球-クライマックスシリーズは必要か

NPBの長い歴史の中でつくり上げられた「ペナントレースでリーグ1位になったチームこそ、リーグ優勝チームとしてふさわしい」という概念を覆すには多大な労力が必要であり、また大きな賭けにもなるでしょう。

いろんな意見が錯綜する中、どれがもっとも相応しいかは議論が必要ですが、個人的には、今のところ以下のアイデアがクライマックスシリーズとペナントレースの相関を成り立たせてくれるように感じます。

  • 12球団を1リーグ制にする
  • 1リーグを3ブロック(地区)に分ける(セントラル、パシフィック、新名称など)
  • 1ブロック4チームとする
  • 各ブロック優勝チームおよび(各ブロック優勝チームを除く)勝率上位2チームの計5チームによるプレーオフ(クライマックスシリーズ)を行う
  • プレーオフ(クライマックスシリーズ)は複数試合による先勝制のトーナメント方式で行う
  • (各ブロック優勝チームを除く)勝率上位2チームが対戦し、その勝者がトーナメント・セミファイナル(ファーストステージ)へ進出する(MLBでいうワイルドカード)
  • セミファイナル(ファーストステージ)は(ブロック優勝チーム中)勝率1位と(MLBでいう)ワイルドカードの勝者の対戦、(ブロック優勝チーム中)勝率2位と3位の対戦とする
  • セミファイナル(ファーストステージ)は3勝先勝制、ファイナル(日本シリーズ)は4勝先勝制で行う

written by 空リュウ

【2017NPB】横浜DeNAベイスターズがCS下克上で日本シリーズへ

2017横浜ベイスターズ-クライマックスシリーズ下克上

2017年度NPBセリーグ・クライマックスシリーズは、ファイナルステージで横浜DeNAベイスターズが広島東洋カープを対戦成績4勝1敗で下し、ベイスターズが19年ぶりとなる日本シリーズ進出を決めました。

ペナントレース3位のベイスターズは、ファーストステージでペナントレース2位の阪神タイガースを2勝1敗で下しているため、3位のチームが日本シリーズに進出するのはセリーグでは初となります(パリーグは2010年の千葉ロッテマリーンズ)。

マシンガン打線を彷彿とさせるDeNAベイスターズ打線の下克上劇場

1990年代にその名を轟かせた“マシンガン打線”の勢いが、今回のクライマックスシリーズのベイスターズ打線に垣間見れた気がします。対阪神とのファーストステージ初戦こそ沈黙しましたが、2戦目の逆転勝利を機に打線の勢いは増し、ファイナルステージでも1敗から4連勝するなど一気の爆発力がありました。

悪条件での勝利が下克上の序章に

2017横浜ベイスターズ-クライマックスシリーズ下克上

ファーストステージ初戦を0-2で落としたあとの第2戦は、雨天泥グラウンドでのゲーム。

先に2勝したほうがファーストステージ突破という状況で阪神に先制され、崖っぷちのベイスターズ。しかし、主軸のロペス、宮崎らの犠飛、タイムリーで逆転に成功。さらに、筒香のタイムリー、代打・乙坂の3ランなどの猛攻も加わり、結果13-6の大勝でした。

この勢いのまま第3戦も6-1で阪神を下し、ベイスターズがファーストステージを突破。

今回のクライマックスシリーズで課題にあがったのは日程でしょう。いくら後ろが詰まっているからとはいえ、あの泥グラウンドの悪条件の中ゲームを強硬するのは、プロの興行とはいえないレベルです。のちに、妥当とはいえ、ファイナルステージ初戦で5回降雨コールドゲームの判断をしたのも物議をかもしました。

投打がかみ合うベイスターズ、らしさが出ないカープ

ペナントレース1位のカープはアドバンテージの1勝にくわえ、ファイナルステージ初戦を降雨コールドで勝利。4勝を先勝したほうが日本シリーズ進出という条件で、2勝0敗という圧倒的に有利な立場となりました。

しかし、第2戦はベイスターズ先発の濱口が粘りの投球をみせ、打線も奮起してカープ先発野村を打ち崩し、6-2でベイスターズが勝利。ここからベイスターズの逆襲が始まりました。

さらに、続く第3戦をベイスターズは7人の投手で継投。投手戦を制して1-0で連勝しました。これで対戦成績2勝2敗のタイに。ベイスターズ先発井納が自ら決勝タイムリーを放つなど、流れがベイスターズに傾きつつある雰囲気です。

第3戦のあとは雨が続き、雨天中止で2日流れました。これで流れが変わるケースもありますが、ベイスターズの勢いは止まりません。

2017横浜ベイスターズ-クライマックスシリーズ下克上

第4戦はカープが初回にいきなり丸の2ランなどで3点を先制。しかし、ベイスターズが4回に筒香のソロホームラン、続く5回に桑原、ロペスのタイムリーで逆転に成功。7回からは今季勝ち頭の今永を中継ぎで起用し、7、8回とカープ打線を零封するなど、投打がかみ合いました。

一方のカープは対照的な内容。初戦で5回無失点だった薮田が、この試合4回0/3を投げて4失点で降板。打線もダブルプレーを3つ喫するなど、拙攻が目立ちました。これでベイスターズが日本シリーズ進出に大手。

背水の陣となったカープは、第5戦またもや初回に丸、バティスタのタイムリーで先制します。しかし、ベイスターズはこの試合でも2回から5回まで4イニング連続で得点をあげ、あっさりと逆転に成功。さらにその後も3点をくわえ、一気にカープを突き放します。結局、ベイスターズ打線は計5本のホームランを含む16安打でカープを圧倒し、9-3で第5戦に勝利して、対戦成績4勝2敗で日本シリーズ進出を決めました。

カープはペナントレースで2位阪神に10ゲーム差をつけ、今季ぶっちぎって優勝しましたが、対戦成績をみると、唯一ベイスターズにだけ負け越しています(12勝13敗)。アドバンテージの1勝はありましたが、相性は五分。むしろ、苦手意識があって、短期決戦ではもっとも対戦したくない相手だったのでは。

短期決戦の流れを引き寄せたラミレス監督の名采配

シーズン143試合、期間にして約7ヶ月もの間戦い抜くペナントレースとは異なり、クライマックスシリーズは超短期決戦です。

能力のある選手が調子が上がらないため、我慢して使い続けるということをペナントレースではよく見聞きしますが、わずか3戦、7戦という短期決戦ではそんな悠長なことはしていられません。

昨年日本一になった北海道日本ハムファイターズ・栗山監督の采配は、クライマックスシリーズ、日本シリーズの短期決戦で正に効果的でしたが、同様に今回のクライマックスシリーズで短期決戦としての采配が冴えていたのはベイスターズ・ラミレス監督でした。

2017横浜ベイスターズ-クライマックスシリーズ下克上

打線の入れ替えなどはシーズン中から見られましたが、とりわけ、短期決戦としての投手継投に妙を見ることができました。

そのひとつがファイナルステージ第4戦。1点のリードを守るために計7人の投手で継投し、強力カープ打線を3点に抑えることに成功したゲームです。特に、7回に今永を投入したところにラミレス監督の才能がうかがえます。

対戦成績2勝2敗とし、第4戦は日本シリーズ進出に王手をかける大事な一戦。6回終了時点で4-3とリードし、9回のマウンドを託すクローザー山﨑につなぐまでの7、8回をどう抑えるかという点がポイントでした。ここで左のエース今永を送り込むという采配にラミレス監督のセンスをみます。

2017横浜ベイスターズ-クライマックスシリーズ下克上

ふつうであれば、シーズン中の勝ちパターンを崩したくないというのが監督の心理でしょう。結果的にそれでも抑えることができるのかもしれませんが、シーズン中にはない短期決戦特有の選手起用をすることで、選手にも緊張感を与えられるでしょうし、勝負をかけていることも伝わるはずです。何より相手が面食らい、まともに準備ができないという奇襲効果もあります。この場面は3勝目がかかった大事な一戦の勝負どころであり、0点で抑えるもっとも確率の高い投手をラミレス監督が起用したと判断できます。

同様に、第5戦の先発石田が初回に2失点を与えたところでも早々に継投に入っています。第2戦で先発した濱口を三番手で起用するなど、ここでも大胆なアイデアを実行しています。それぞれの場面で英断したラミレス監督の采配は当然評価されるべきものですが、その起用に応えた選手がそれ以上に素晴らしかったといえます。

「短期決戦では普通の人が考えないようなアイデアが重要」と語っているように、ラミレス監督は相手より先に動くことで相手の勢いをそぎ、自軍が優位になる流れをつくる戦術をとっています。少なからず、この戦い方は他のチームも参考にする風潮が出てくるのではないでしょうか。

written by 空リュウ

【連続ドラマW】「楽園」を観た私見・感想

連続ドラマW-楽園-感想

WOWOW連続ドラマW「楽園」(2017年、主演・仲間由紀恵)は、原作・宮部みゆきの同名小説を映像化した作品です。

本作は、累計発行部数420万部を突破した「模倣犯」の事件から9年後という設定で描かれたもので、映像化作品としては本ドラマが初。

「模倣犯」の登場人物(前畑滋子)を主人公とした作品ということで耳目が集まりました。

人が追い求める“楽園”とは

模倣犯の事件から完全には立ち直れず、いまだトラウマを抱えているルポライター・前畑滋子(仲間由紀恵)は、あることをきっかけに16年前に起きた殺人事件を調査することになります。

自宅の火事を機に、16年前に娘を殺害して床下に埋めたと自ら名乗り出る土井崎元(小林薫)が、本作のキーパーソン。土井崎家の人間が、何を思い、何を行ってきたのか。過去の事件と新たに起こる事件が密接に絡み合い、それに関わる人間模様が色濃く描かれています。

過去と現在をつなぐ少年の特殊能力

連続ドラマW-楽園-感想

人知を超えた力、つまり、科学的には説明できない不思議な力をもつ少年・萩谷等(黒澤宏貴)が展開の起点となっています。その特殊能力は、“他人の記憶が見えるのかもしれない”というもの。

この少年を子にもつ母親・萩谷敏子(西田尚美)からの依頼で、少年が描いた絵について滋子は調査することになります。

その絵は土井崎家の殺人事件が発覚するより前の段階で描かれたようですが、まるでその事件を予見していたかのように描写が酷似しています。

等の特殊能力は、他人の記憶が見えるという設定のため、実際は“予見”ではなく、“見たままの事実”を描いたことになります。

この記憶は誰の記憶なのか──。

“他人の記憶が見える”という非科学的な設定にやや興ざめする感があるものの、この一枚の絵をもとに、新たな人間関係がみえてくることになります。

事件の真相へとたどる人間関係

連続ドラマW-楽園-感想

一枚の絵をもとにつながる新たな人間関係、それは16年前に殺害された土井崎家の長女・茜(伊藤沙莉)に起因しています。

素行の悪かった茜は、自宅周辺でも噂になるほどの存在。荒れていった理由のひとつに、当時、両親の愛情が次女・誠子(夏帆)に傾倒していると錯覚していた向きもありますが、それ以上に茜を大きく狂わせた要因は交友関係にあります。

入念な調査を続けていた滋子は、この茜の交友関係に何か手がかりがあるとにらみ、危険な領域へも踏み込んでいきます。それは依頼人からの望みにこたえた行動でもありますが、それ以上に、元の自白に違和感を覚えたことにより、真実が知りたいという自らの探究心が勝った結果でもあります。

たどり着いた先に見たおぞましい光景は、はたして最悪のケースが現実となってしまった痕跡なのか──。

家族を守るために決断した何か

連続ドラマW-楽園-感想

父・元が家族を守るために決断したもの。

それは第三者にはふれることのできない心の深淵に秘められています。

守る側、守られる側で、おのおのの見解は180度かわってくることも多々あります。そして、相手を慮る気持ちは理解されないということも往々にしてあります。それがちょっとした誤解であれば傷も浅くすみますが、もし生じた誤解に明かせない理由がある場合、悪化した関係を一生ひきずってしまう事態にもなりかねません。

ラストに明かされる真実には、家族を守り通そうとしている元の信念が垣間みえます。

理想として描いた家族が安らげる場所──。それは彼自身にしかみえない、誰にも侵食されることのない守られた聖域だったのかもしれません。

written by 空リュウ

【充電器】ダイソーの2A急速充電器(300円)は使える?

昨今のスマホはスペックが飛躍的に向上し、内臓バッテリーも容量が大きくなっています。ただ、消費したバッテリーを補充する充電スピードには、不満を抱いている人も少なくないのではないでしょうか。

100円ショップ・ダイソーで販売されている300円モバイルバッテリーは有名ですが、常時使用する充電器(ACアダプター)の性能はどれほどのものなのか。コスパという観点からも、ダイソーの「300円急速充電器(ACアダプター)」と「100円急速充電USBケーブル」が使えるツールなのか検証してみました。

関連記事-アシックス-グリップ抜群ジャパンL-生産(製造)終了関連記事:【充電器】ダイソーの500円モバイルバッテリー(3,000mAh)は使える?

ダイソーの急速充電器G208(300円)&USBケーブルは2.4A対応

100均スマホ急速充電器-2017ダイソー

家電量販店のスマホ充電器のコーナーでも“2A急速充電”という見出しはよく見かけます。つまり、そこにはユーザーが求めるニーズがあって、いまや購入にあたって必要不可欠な条件になっているのでしょう。

Quick Charge 2.0対応スマホや、大容量バッテリーのタブレットなどを充電することも視野に入れると、100均で販売される充電器も急速充電に対応せざるを得ない段階にきています。

急速充電ACアダプター(2A)の価格をみると、家電量販店では2,000円前後から、Amazonなどでは1,000円を切るものも販売されています。それらと比較しても、ダイソーで販売されている300円ACアダプター(2.4A)のコスト感は群を抜いています。

参考まで、ダイソー300円ACアダプターの側面には以下の記載があります。

300Charger
テラ・インターナショナル(株) G208
I/P AC100-240v 50/60hz 0.3A
O/P DC5.0V=2.4A
MADE IN CHINA

要するに、INPUT(入力)が電圧100~240v 周波数50/60hz 電流0.3Aの範囲であれば、5Vで最大2.4Aの電流をOUTPUT(出力)するというもの。

サイズ的には、幅28mm×高さ45mm×奥行45mmという箱はやや大きく感じますが、差込プラグが折りたたみ式になっているのが妥協点でしょうか。

ACアダプターとUSBケーブルは急速充電対応をセットで使用

100均スマホ急速充電器-2017ダイソー

2Aを超える急速充電器が流通するまでは、個人的にも当然ながら1AのACアダプター&USBケーブルを使っていました。

ひと昔前に100均で販売されていたACアダプターやUSBケーブルは、実測0.5A程度のものも多く出回っていて、これらの機器でフル充電させるには、かなりの時間を要していました。

急速充電のツールを購入する場合、注意しておかないといけないのは、ACアダプターが2.4A出力であっても、USBケーブルが1A対応であれば、能力的には1Aの仕事しかしてくれないという点です。この状態では下位互換になってしまいます。逆もしかりです。

つまり、ACアダプター、USBケーブル、“どちらも2A以上に対応している製品を結合させないと意味がない”ということになります。

充電能力としては、単純計算でも1.0Aと2.4Aでは、2倍強の差があります。

100均スマホ急速充電器-2017ダイソー

実際にどの程度の数値が出ているのか、テスターを使って検証してみました。

バラつきはあるものの、おおむね1.4~1.6Aの出力の範囲で電流を供給していました。

MAX出力2.4Aの数値は出ませんが、それでもACアダプター300円(2.4A)、USBケーブル100円(2.4A)、計400円(税別)は十分すぎるコスパといえます。

参考値として、XperiaXZ(2900mAh)を充電した場合、充電残量10%から70%までの充電時間が約60~70分程度です。

車載用USB充電シガープラグも急速充電(2.1A)対応に

100均スマホ急速充電器-2017ダイソー

ドライブやマイカー通勤、社用車での営業など、車での移動でも、いまやスマホの充電器は必須ツールです。

とくに地方は車社会のため、ちょっとした移動時間でも可能な限り充電したいと思うのがドライバー心理ではないでしょうか。

スマホの急速充電器は、この分野にも拡充されています。ダイソーでは、(シガーソケットに対応した)USB接続可能な急速充電対応シガープラグ(300円)が販売されています。

2.1A出力ですが、急速充電対応USB(2.4A)を接続すれば急速充電ツールとして使用できます。以前、1A以下(実測0.5A程度)のシガープラグを使用していましたが、それと比較すると3倍速ほどの充電スピードを体感できました。このツールもコスパに優れているので、試してみる価値はあると思います。

written by 空リュウ

関連記事-アシックス-グリップ抜群ジャパンL-生産(製造)終了関連記事:【充電器】ダイソーの500円モバイルバッテリー(3,000mAh)は使える?

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【マーケット】サイバーステップ(3810)株価急騰から急落へ

サイバーステップ株価-暴騰暴落

注目の新興市場銘柄サイバーステップ(3810・東証マザーズ)の株価が急騰し、そして急落した軌跡を備忘録。

本銘柄は、2017年1月から株価(1/6終値398円)が徐々に上昇し始め、4月に入って急騰(4/14終値1,799円)しています。さらに、約5ヶ月で10倍を達成(6/9終値4,310円)し、2017年6月のひと月で10倍から20倍(6/30高値7,980円)にまで暴騰しました。

急騰から急落へ転じた大化け銘柄サイバーステップ(東証マザーズ)

2017年1月の株価から起算すると、6ヶ月で20倍にまで達した、いわゆる“テンバガー株”サイバーステップ。当該企業は、PC、スマホのゲームコンテンツを開発しています。

ゲームコンテンツを開発している企業は多数ありますが、サイバーステップ社は自社オリジナルのゲームコンテンツを開発することに注力していることでも知られています。

ゲーム業界では、「IPタイトル」と呼ばれる版権のある著名なゲームタイトルを開発することが多く、アニメ、キャラクターなどの誰でも知っているようなビッグネームのゲームを開発すると、ヒットする確率が高くなるとみられています。ただ、IPタイトルの場合、版元や参画企業によって収益配分されるため、必ずしも高収益とはいえません。

2017.1.13 新作ゲームアプリの発表でストップ高に

サイバーステップ株価-暴騰暴落

2017年、新年早々、サイバーステップ社は自社オリジナルPCゲーム「ゲットアンプド」のスマホアプリ版「ゲットアンプドモバイル」を年内にリリースすると発表しました。これに市場は反応し、連日のストップ高をつけるに至っています。

PCオンラインゲーム「ゲットアンプド」は、海外でもリリースされており、累計3,000万ユーザーがプレイしたという実績のある自社タイトルです。

版元などと収益が配分されるIPタイトルに比べ、自社タイトルは高収益となり、業績アップに寄与することが想定されます。そういった思惑からも買いが集まりました。

2017年1月13日
サイバーステップ<3810>が後場に入って急騰し、前日比80円高の455円とストップ高まで買われている。同社は、この日(1月13日)、新作アプリ『ゲットアンプド モバイル』と『Q&Q アンサーズ』の公式サイトを公開しており、市場からはポジティブサプライズとして、今後の業績拡大を期待した買いを集めているようだ。
(引用:Social Game Info)

2017.1.23 7連騰でサイバーステップ株が注目銘柄に

サイバーステップ株価-暴騰暴落

2017年1月13日のリリース以降、新作ゲーム公式サイトの公開やサンリオとの業務提携の発表など、相次いで材料をリリースしました。

さらに、1月23日のリリースでは、収益の柱である既存クレーンゲームアプリ「トレバ」の筐体を100台増設し、計260台の稼動になることも公開されています。

これによって本銘柄は7連騰となり、1月12日の終値375円から1月23日高値1,335円まで、約3.5倍まで高騰したことになります。

2017年1月23日
13日に新作ゲーム2作の公式サイトを公開したことをきっかけに、買い人気化しているが、本日は、クレーンゲームアプリ「トレバ」の筐体稼働台数が4月までに現在の160台から260台に増加すると発表し、買い材料視された。
13日から本日23日まで7営業日連続でストップ高となったが、このうち4営業日がストップ高比例配分となったため、買い切れていない向きが多く、本日も新たな買い材料浮上に買い優勢の展開となっている。
(引用:四季報ONLINE)

2017.4.7 業績予想の上方修正により一つ上のステージへ

サイバーステップ株価-暴騰暴落

1月の連続リリースにより株価は高騰しましたが、しばらく横ばいの期間が続きました。

本銘柄の株価が大きく動いたのは、2017年4月7日引け後に発表された「2017年5月期の連結業績予想の上方修正」によるものです。営業利益予想が従来の4000万円から3億5000万円に上方修正され、市場は即座に反応しました。

このリリースによって株価は連騰し、4月7日終値917円から4月14日には高値2,197円まで、5営業日で2.4倍まで高騰しています。

2017年4月10日
営業利益予想を従来の4000万円から3億5000万円(前期は2億8900万円の赤字)に引き上げた。テレビCM開始や大規模増台が奏功し、オンラインクレーンゲーム「トレバ」が好調に推移しているという。同ゲームはスマートフォンやPCブラウザから実際に存在するクレーンゲームの筐体を操作し、景品を獲得すると送料無料で自宅に配送されるというサービス。
(引用:四季報ONLINE)

株価急騰で時価総額100億越えのテンバガー株へ

サイバーステップ株価-暴騰暴落

4月7日の業績予想の上方修正発表以降、特に大きなリリースはありませんでしたが、株価は右肩上がりで上昇し続けています。

チャートを見ると一目瞭然ですが、とりわけ時価総額が100億を超えてからは大きく値が動くこともしばしばで、上昇スピードに拍車がかかっています。これは機関投資家の参入が要因で、くわえて、本銘柄の浮動株数が少ないこともその一因でしょう。

また、本銘柄の売買が過熱していることから、東証は4月17日、信用取引の新規売買に係る委託保証金率を50%以上(うち現金20%以上)に引き上げる、いわゆる増担保規制を実施しています。

勢いの弱い銘柄の場合、増担保規制後は下降トレンドに入る傾向が強いですが、本銘柄は規制後もさらに上昇し続けています。

勢いの止まらない本銘柄は6月27日についに高値7,980円をつけ、翌日6月28日から信用規制強化が実施されました(委託保証金率を70%以上、うち現金40%以上に引き上げ)。

2017年6月28日
東証マザーズのサイバーステップ(3810)が6日ぶり反落。午前9時12分に前日比640円(8.8%)安の6600円まで下落した。東証が当社株について、28日売買分から信用取引の新規売付け・買付けに係る委託保証金率を70%以上(うち現金を40%以上)に変更した。オンラインクレーンゲーム「トレバ」の好調を背景にこのところ株価が上昇基調を強めていたため、信用規制の強化をきっかけに利益確定売りが先行したとみられる。
(引用:四季報ONLINE)

2017.7.14 2018年5月期大幅減益予想で株価急落

サイバーステップ株価-暴騰暴落

2017年の初値から株価20倍を達成したサイバーステップ株ですが、7月14日引け後に発表した2018年5月期の業績予想は市場の期待を裏切る内容だったようです。

売上高は前期比22.9%増の38億円の見通しとしていますが、営業利益は前期比73.1%減の1億円、純利益は前期比91.2%減の2500万円にとどまると発表しています。

これに市場は嫌気がさし、2連ストップ安になったあと、7月20日の始値4,110円まで大きく売られ、株価は3営業日で約36%も急落しています。

IRの内容によると、

  • 売上はかための予想をした数字であること
  • 10億円規模のプロモーションを予定していること

などが業績予想の数字に反映されているようです。

裏を返せば、業績予想について上方修正の可能性があることを示唆しているともとれ、また、大規模なプロモーションをしなければ、営業利益も前期比増の決算内容になったのではないか、ともとれます。

そういった見方もあったようですが、憶測に過ぎず、やはり最後は数字での判断ということになり、市場は嫌気がさしたのでしょう。

市場にそういう判断をされることを会社側も予想していたのか、決算発表と同日のリリースで、新作タイトルや「継続企業の前提に関する重要事象等」の記載解消なども発表されています。

いったんは急落した株価ですが、今後のIR次第では再上昇の可能性も秘めているのではないでしょうか。また、本銘柄は日本経済新聞が発表した「伸びる会社MIDDLE200」にも選定されており、市場だけではなくメディアもその動向には注目しています。

[3810] サイバーステップ(東証マザーズ)

サイバーステップ株価-暴騰暴落

written by 空リュウ

【バッシュ】アシックス「ゲルバースト21」の私見・評価

ゲルバースト21-アシックス-クッション-グリップ

初代モデル(1997年)が発売されてから実に20年が経過し、2017年モデルが21作目というアシックスの人気シリーズ「ゲルバースト」。

2017年4月、デザインを一新し、スタイリッシュなバッシュとして「ゲルバースト21」が発売されています。

洗練された仕上がり「ゲルバースト21」

ゲルバースト21のデザインを最初見たときに思ったことは、「何となくアシックスぽくないな」という良い意味での印象でした。率直にいうと、「意外とカッコイイ」という評価です。

個人的には、「アシックスのバッシュといえばジャパンL」という感覚で、長きに渡ってジャパンLを愛用してきました。しかし、そのジャパンLが2017年4月でついに生産終了。

使用しているジャパンLが寿命というタイミングだったこともあり、いろいろ思案した結果、時流には逆らわない選択をしました。

つまり、最新の技術を装備しているゲルバースト21を購入しようという判断です。長期間ジャパンL以外のバッシュには見向きもしなかったので、個人的には思い切った判断をしたと思っています。

秀逸なグリップのアウターソール

ゲルバースト21-アシックス-クッション-グリップ

ゲルバースト21を履いて2ヶ月が経過しましたが、ソールのグリップ力はかなり秀逸だと感じました。

ジャパンLのグリップ力もかなり優れていましたが、グリップ力についてはゲルバースト21も申し分なく、ラバー(ゴム)の性能は“The asics”を感じられるクオリティです。

いくつかのコートで試しましたが、滑る感覚は一度も受けていません。というよりもむしろ、“止まる”という印象です。やはり最新の技術はモノが違うというところでしょうか。

メーカーがドライブ力を売りにしているところからも、横の動きに強い構造になっているようです。

かかと部にエクストラヒールカウンターを搭載。内側より外側を高くした形状により、ドライブ動作時のシューズ外側への倒れ込みを抑制。
~メーカー商品紹介より~

足の負担を軽減するクッション性

ゲルバースト21-アシックス-クッション-グリップ

衝撃緩衝材GELをミッドソールに、SpEVAをかかと部分に内臓。

ゲルバースト21を履いて最初に感じたのが、この優れたクッション性です。一歩踏み出すたびに、地面と反発して浮き上がるような感覚を覚えます。

その反発が次の一歩への原動力になっているかのような感覚。おそらく推進力のもとになっているはずのこのクッション性に、まずは衝撃を受けました。

クッション性の弱いバッシュを履いている人がゲルバースト21へチェンジした場合、練習や試合を終えたあとなど、足の裏の疲れがかなり軽減されていることに気づくはずです。

足首以下をサポートするアッパー

ゲルバースト21のアッパーは合成樹脂製で、内部に柔軟な素材が使用されています。

網目状に凹凸のある仕様が強度を支え、見た目にもクールなデザインになっています。個人的にはこのアッパーの仕上がりが気に入っています。

見た感じは堅そうな印象を受けますが、履いて紐をぐっと縛ると、素材の意外な柔軟性に気づくはずです。足首以下が、がっちりサポートされている感覚です。

ゲルバースト21を履いて紐を縛ったとき、いつか聞いたショップ店員の言葉が脳裏によみがえってきました。

「海外のプレイヤーは足をガチガチにサポートしてくれるバッシュを望む傾向が強いんです。なので、日本人がジャパンLに対して求めるような、アッパーの革を足になじませるという感覚は理解しがたいみたいです。悲しいけど、時代の流れというやつですかね」

  • 私見による性能比
項目JapanLGB21短評
グリップGB21のラバーは安定してグリップが効く
クッションGB21のクッショニングは秀逸
重量GB21(約390g)の方が明らかに軽い
アッパー強度という点で合成樹脂のGB21は優秀
吸い付き感JapanLのフロアへの吸い付き感は圧倒的
フィット感JapanLの本革は足になじむ感覚が秀逸
サポート感最新技術で足を保護するGB21に安心感

written by 空リュウ

関連記事-アシックス-グリップ抜群ジャパンL-生産(製造)終了関連記事:「ジャパンL」2017年4月末で生産(製造)終了に


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