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【連続ドラマW】「パンドラIV AI戦争」(主演・向井理)を観た私見・感想

連続ドラマW-パンドラⅣ-感想

WOWOW連続ドラマW「パンドラⅣ AI戦争」(2018年、主演・向井理)は、シリーズ化されている「パンドラ」の4作目にあたる作品です(スペシャルドラマ版は除く)。シリーズを通して脚本を手がけるのは「白い巨塔」などで知られる井上由美子。

パンドラシリーズ1作目から共通しているプロットは、“禁断の箱は、希望の光となるのか、それとも絶望の淵へ沈んでしまうのか”という儚い因果。そして、その利権に群がる人間の欲望も赤裸々に描かれています。

*以下は一部ネタバレを含む私見・感想です。

解き放たれたAI医療「パンドラⅣ AI戦争」

主演・向井理が演じる医師・鈴木哲郎が本作AI医療のキーパーソン。鈴木の開発した医療用AI「ミカエル」が、いわば禁断の箱から解き放たれた“混沌”です。これが本作の“希望の光”となっています。

脇をかためるキャストとして、開発者鈴木を取り込むIT企業代表・蒲生俊平役に渡部篤郎、AI導入に反対する医師会会長・有薗直子役に黒木瞳、鈴木をサポートする看護師・橋詰奈美役に美村里江、弁護士・東浩一郎役に三浦貴大、優秀な心臓外科医・上野智津夫役に原田泰造、毎朝新聞記者・太刀川春夫役に山本耕史という面々。太刀川記者役の山本耕史はパンドラⅠ~Ⅲにも出演している固定キャストです。

今回も主人公となる人物の姓は“鈴木”で、これはⅠから継続。また、ナレーションも引き続き継続出演の山本耕史がつとめています。

パンドラⅣのフレームワークは

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パンドラシリーズは常に究極のテーマを扱っていますが、本作Ⅳの「AI医療」は、医師の長時間労働、地方の医師不足など、現代社会でも起こっている問題を鑑みても、時代に合ったテーマといえます。

個人的にはパンドラシリーズのテーマは毎回興味深く、連ドラWの中でもとりわけ好みの作品。本作Ⅳも、観る側が期待するクオリティの範疇にうまく収められています。

Ⅰ以降、パンドラシリーズでは利権に絡むパワーバランスがつきものですが、本作Ⅳでも、AI医療推進のために蒲生が厚生労働大臣(升毅)の後ろ盾を得ようとし、医師会会長の有薗がそれを阻止しようとする権力の相関が描かれています。蒲生が闇社会の人間に狙撃されるなど、ダーティーなシーンも。

キャストも相応の顔ぶれでそれぞれが適役。登場シーンが多いことにも比例していますが、渡部篤郎がもつミステリアスさ、三村里江の好演が要所で作風を引き締めています。個人的には、上野医師役・原田泰造の配役も徐々に馴染みましたが。

一方で違和感があったのは“希望の光”の設定。IT企業ノックスグループ代表の蒲生が、鈴木という一人の人間を抱き込んでAI医療で日本を席捲しようとするのは作品の性質上やむを得ない構成ですが、医療用AIミカエルを鈴木単独で開発している様は、非現実的でどうしてもチープに映ります。AI医療の初期段階とはいえ、セキュリティも考慮するとそれなりの規模のシステムになるはずで、ビジュアル的にも相応の開発人員を配置し、小規模ながらもデータセンターぐらいは構えてほしいところ。

“AI戦争”のあとには

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本作Ⅳでは問題提起の一つとして、「AI診断にもとづく施術方法と、執刀医の上野が判断した施術方法に相違が生まれ、結果患者が死亡する」という事件の経緯が描かれています。

ここで鈴木と上野の間に確執が生まれ、いわゆる「名医といわれる医師の判断さえもAI医療には必要ないのか」というAI医療の体制の是非について問うという流れ。パンドラシリーズらしい着想です。

また、もう一方の側面では「蒲生に対するAI診断が誤診だった」ことも判明し、この事実を鈴木自らが公表しています。AIそのものが意思をもち、失敗を重ねることでAIが自ら学んでいくという、開発者でさえも予期できないプログラム。この仕様ではとても国家プロジェクトとして推進できるものではないとの観点から、“AI戦争の休戦”を落としどころとしています。

「医療用AIは完璧ではなかった」という方向に話をもっていきたいのは理解できますが、強引に感じるこの展開は、ケレン味の利いた演出から突如シャットダウンされたような印象を受け、残念ながらやや粗さが残っています。

エンディングもパンドラシリーズの定番の流れ。“希望の光は結局絶望の淵へ沈んでしまうのか”という描写です。本作Ⅳでも、AI医療が空中分解した状態で、1年後のエピローグが描かれています。

一部ディテールに突っ込むところはありますが、作品全体としては本作Ⅳもクオリティは確か。AIを題材とするテーマは異分野にもあるため、今後のパンドラシリーズでAIモノが再登場するのもアリではないでしょうか。

written by 空リュウ

【連続ドラマW】「石つぶて」(主演・佐藤浩市)を観た私見・感想

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WOWOW連続ドラマW「石つぶて」(2017年、主演・佐藤浩市)は、ノンフィクション作家・清武英利が書き下ろした「石つぶて 警視庁二課刑事の残したもの」を映像化した作品です。

同著者作品の連続ドラマW映像化は「しんがり」(2015年、主演・江口洋介)に次ぐ2作目。

タブーとされていた外務省の報償費(機密費)が題材になっている点からも、連続ドラマWならではの緊張感のある描写が続く作品に仕上がっています。本作(原作)は実際に起きた外務省機密費流用事件が題材であることから、以下は一部ネタバレを含む表現になっています。

無骨な刑事「石つぶて」がつらぬいた信念とは

警視庁捜査二課第一知能犯情報係──。新たに赴任した係長・警部の斎見(江口洋介)と、その部下である主任・警部補の木崎(佐藤浩市)、この二人の直属の上司である課長・警視正の東田(萩原聖人)が本作を動かす当部署の主要キャストです。

徹底して信念を貫く無骨な刑事の木崎は、他人の意見にほとんど耳を貸さず、ひたすら己の信じる道を突き進みます。芯の通った人物の斎見でさえ拒絶する様は、十分すぎるほど堅物な印象を与えます。とりわけこの二人が枠に収まらないため、年下上司役として舵をとる東田(萩原聖人)の低姿勢で生真面目な面が際立ち、三者の関係が絶妙なトライアングルを描いています。

それぞれの立場から個が放つ存在感

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折しも九州沖縄サミットが開催されている最中、木崎が足しげく通う元国会議員・溝口(津嘉山正種)から、外務省ノンキャリア職員に贈収賄容疑がかかっていることを知らされます。

過去の苦い経験から上司にも情報を共有しない徹底ぶりの木崎と、木崎がヤマに近づこうとしていることを確信している斎見が動き始めることで、徐々に裏取りの捜査が展開されていきます。

木崎役である佐藤浩市の重厚な存在感は、終始一定の緊張感を保つ礎となり、斎見役の江口洋介の熱演は作品に活気をもたらせています。

この両キャストに劣らず、名演で個を放っているのが疑惑の外務省ノンキャリア職員・真瀬(北村一輝)。仕事に対するそつのなさ、周囲とのコミュニケーション力、女性へのマメさなど、悪徳職員でありながら、デキる男というイメージを北村一輝が見事に演じています。

報償費という名の錬金術

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捜査の過程で浮上する一ノンキャリア職員の巨額の遊興費。総額10億にものぼる資金はすべて親の遺産であると主張する真瀬を、木崎と斎見が追い詰める取調べシーンは本作の見どころの一つ。

「殺されますよ」

追いやられた真瀬が吐くこの台詞には、思わず息を呑むような凄みがあり、背後にいる大物を想起させる効果があります。

外務省ノンキャリア職員としては権力に忠実で職務も無難にこなすものの、一方では愛人への資金援助や競走馬の購入など、大金を湯水のように惜しげもなく乱費するという二面性。報償費の着服という錬金術に手を染める人間でありながらも、愛人や周囲への気配りができる真瀬は、どこか人間臭さや愛嬌を感じる奇妙な人徳も持ち合わせている人物なのかもしれません。

抗うことができない巨大な壁

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結局真瀬を横領罪で起訴することはできず、落としどころを詐欺罪にもっていかれるあたりは、現実の事件同様、憤りとやるせなさを感じる本作の核心部分。

木崎の説得も虚しく公判でも真瀬はすべてを語ることはありません。これによって真相は闇に葬られることになり、“石つぶて”たちに抗えない壁が立ちはだかっていることを痛感します。

作中で頻繁に登場する隠語“サンズイ(汚職事件)”が近年減少傾向にあるというのは、浄化されているというよりはむしろ、事が巧妙化されて発覚しづらくなっているのではという邪推にたどり着くのが自然。

ラストに女性刑事・矢倉(飯豊まりえ)が一石を投じる逸話が挿入されているあたり、“石つぶて”の魂が継承されることを願うメッセージとして受けとれます。

written by 空リュウ

【連続ドラマW】「コールドケース~真実の扉~」を観た私見・感想

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WOWOW連続ドラマW「コールドケース~真実の扉~」(2016年、主演・吉田羊)は、ワーナー・ブラザースから版権を獲得し、“日本版コールドケース”としてリメイクされた作品です。全10話のストーリーは、WB製作のオリジナルを踏襲した内容で製作されています。

神奈川県警捜査一課の警部中隊長・石川百合を演じる吉田羊は、本作が連ドラ初主演ということで耳目を集めました。

解き明かされる未解決事件「コールドケース」

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日本版コールドケースの舞台は神奈川県警捜査一課が管轄するエリア。みなとみらい周辺のロケーションも時おり登場します。

石川百合役・吉田羊の脇を固めるキャストに、部下・高木信次郎役の永山絢斗、同僚・立川大輔役の滝藤賢一、同じく金子徹役の光石研、そしてチームをまとめるボス(警視)役に三浦友和という個性的な顔ぶれ。

10話から成るシーズン1は、基本的に1話完結の脚本で構成されています。

コールドケースが映し出す過去

オリジナル版をベースとしている各エピソードは、異なる題材を厳選してリメイクされています。カルト教団、冤罪、猟奇的殺人、虐待など、何十年も未解決のまま時間が経過している事件。

そして、百合を含め、各エピソードで登場する人物は、それぞれ人にはいえない過去を抱えています。とりわけ、最終話で赤松(ユースケ・サンタマリア)と百合が対峙し、緊迫したシーンで明かされる双方の過去は印象深く残ります。

ユースケ・サンタマリアが演じるサイコなキャラクターの設定は、もはや常套ともいえるハマり感。欲を言えば、もう少し人物設定に色をつけて欲しいところ。

コールドケースを解決するチームの色

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各エピソードのストーリーは、それぞれのエピソードごとに主役を立てるのではなく、あくまでチーム・コールドケースとして解決していくという設定で描かれています。

主演・吉田羊を含め、ほかの出演者たちが一様に「やりやすいメンバーで楽しい現場だった」と語っているように、チームの雰囲気がそのままスクリーンに反映されているように感じます。

ただ、それぞれの人物設定がなされてはいるものの、キャラクターとしてのインパクトにやや欠けている印象。刑事というよりはビジネスマンという雰囲気ですが、同時にそのぶん、5人の中では立川大輔を演じる滝藤賢一だけが、キャラが立ちすぎている感も。

日本版コールドケースの立ち位置

他の作品でもいえることですが、原作小説からの映像化や海外版のリメイクの場合、オリジナルのクオリティが高ければ高いほど注文がつきがち。WB製作のオリジナルを見ていない者からすると、日本版は日本版で無難に仕上がっているように感じます。ただ、面白いかどうかと問われるとYESでもNOでもないというのが正直なところ。

また、オリジナルが各エピソードごとにその時代の楽曲を採用しているのであれば、日本版では日本の楽曲を採用したほうが馴染むのでは。シーズン2で改良があるのかどうか。

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残念だったのは、連続ドラマWフリークからすると6話完結というパッケージで見慣れているため、1話完結は展開が忙しすぎて、ところどころ描写がチープで雑になっている感覚を受けました。

実現されないだろうとは思いつつ、2話完結や3話完結のエピソードで継続したほうが、日本版コールドケースのクオリティも上がり、シーズン3へとつながるのではと想像します。

written by 空リュウ


【連続ドラマW】「楽園」を観た私見・感想

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WOWOW連続ドラマW「楽園」(2017年、主演・仲間由紀恵)は、原作・宮部みゆきの同名小説を映像化した作品です。

本作は、累計発行部数420万部を突破した「模倣犯」の事件から9年後という設定で描かれたもので、映像化作品としては本ドラマが初。

「模倣犯」の登場人物(前畑滋子)を主人公とした作品ということで耳目が集まりました。

人が追い求める“楽園”とは

模倣犯の事件から完全には立ち直れず、いまだトラウマを抱えているルポライター・前畑滋子(仲間由紀恵)は、あることをきっかけに16年前に起きた殺人事件を調査することになります。

自宅の火事を機に、16年前に娘を殺害して床下に埋めたと自ら名乗り出る土井崎元(小林薫)が、本作のキーパーソン。土井崎家の人間が、何を思い、何を行ってきたのか。過去の事件と新たに起こる事件が密接に絡み合い、それに関わる人間模様が色濃く描かれています。

過去と現在をつなぐ少年の特殊能力

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人知を超えた力、つまり、科学的には説明できない不思議な力をもつ少年・萩谷等(黒澤宏貴)が展開の起点となっています。その特殊能力は、“他人の記憶が見えるのかもしれない”というもの。

この少年を子にもつ母親・萩谷敏子(西田尚美)からの依頼で、少年が描いた絵について滋子は調査することになります。

その絵は土井崎家の殺人事件が発覚するより前の段階で描かれたようですが、まるでその事件を予見していたかのように描写が酷似しています。

等の特殊能力は、他人の記憶が見えるという設定のため、実際は“予見”ではなく、“見たままの事実”を描いたことになります。

この記憶は誰の記憶なのか──。

“他人の記憶が見える”という非科学的な設定にやや興ざめする感があるものの、この一枚の絵をもとに、新たな人間関係がみえてくることになります。

事件の真相へとたどる人間関係

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一枚の絵をもとにつながる新たな人間関係、それは16年前に殺害された土井崎家の長女・茜(伊藤沙莉)に起因しています。

素行の悪かった茜は、自宅周辺でも噂になるほどの存在。荒れていった理由のひとつに、当時、両親の愛情が次女・誠子(夏帆)に傾倒していると錯覚していた向きもありますが、それ以上に茜を大きく狂わせた要因は交友関係にあります。

入念な調査を続けていた滋子は、この茜の交友関係に何か手がかりがあるとにらみ、危険な領域へも踏み込んでいきます。それは依頼人からの望みにこたえた行動でもありますが、それ以上に、元の自白に違和感を覚えたことにより、真実が知りたいという自らの探究心が勝った結果でもあります。

たどり着いた先に見たおぞましい光景は、はたして最悪のケースが現実となってしまった痕跡なのか──。

家族を守るために決断した何か

連続ドラマW-楽園-感想

父・元が家族を守るために決断したもの。

それは第三者にはふれることのできない心の深淵に秘められています。

守る側、守られる側で、おのおのの見解は180度かわってくることも多々あります。そして、相手を慮る気持ちは理解されないということも往々にしてあります。それがちょっとした誤解であれば傷も浅くすみますが、もし生じた誤解に明かせない理由がある場合、悪化した関係を一生ひきずってしまう事態にもなりかねません。

ラストに明かされる真実には、家族を守り通そうとしている元の信念が垣間みえます。

理想として描いた家族が安らげる場所──。それは彼自身にしかみえない、誰にも侵食されることのない守られた聖域だったのかもしれません。

written by 空リュウ

【連続ドラマW】「ヒポクラテスの誓い」を観た私見・感想

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WOWOW連続ドラマW「ヒポクラテスの誓い」は、2016年に主演・北川景子で映像化された作品です。原作は同名小説・中山七里著「ヒポクラテスの誓い」(2015年刊行)。

北川景子は本作が連続ドラマW初出演であり、また医療系ミステリにも初めて挑んだ作品ということで耳目を集めました。

法医学をめぐる“ヒポクラテスの誓い”

栂野真琴(北川景子)はまっすぐな性格の研修医。いわゆる“研修生”という立ち位置としては、人物設定でありがちな、信念をもって事にあたる芯の強いタイプです。

インタビューで北川景子は、「内科医として働いているときの生き生きとした様子と法医学教室へ移ってからの葛藤のコントラストをつけられるよう演じた」と語っています。

内科に勤務する真琴は、尊敬する津久場教授(古谷一行)のアドバイスによって、法医学教室の光崎教授(柴田恭兵)のもとで研修するところからストーリーが展開されます。

構成の要所で、勤務する浦和医大の館内に掲げられている“ヒポクラテスへの誓い”がインサートされますが、これがつまり、医師としての試金石のような使われ方をしています。

法医学にたずさわる者に必要なものとは

連続ドラマW-ヒポクラテスの誓い-北川景子-感想

法医学教室での研修期間中、真琴は3件の不審死解剖事案にたずさわることになります。

法医学をまっとうする冷静沈着な光崎の言動は、若さゆえに感情で物事を判断しようとする真琴には理解しがたいものとして映り、光崎の真意をはかれません。

光崎は、“解剖によって得られる結果が真実である”ことを真琴に暗に示すが──。

キャスティングとしては、ニヒルな医師役の柴田恭兵は違和感がありませんが、研修医役の北川景子という設定にいくらかのハードルを感じてしまいます。ただ、役に対する意識の高さは演技から感じ取れます。

解剖結果が示した真実とは──

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法医学の権威・光崎に信頼を寄せる古手川(尾上松也)は、正義感の強い埼玉県警捜査一課の刑事。

まっすぐな性格は真琴と重なって映ります。

事故死の死因に疑惑を抱く古手川は、光崎に解剖を依頼するため根回しに奔走します。このシーンの古手川の正義感には共感できます。ただ、解剖にまわすまでの強引な展開が現実的ではなく、水を差しているように感じました。

光崎と古手川が手を組んで解剖をした結果、その先にみえてくるものとは──。

“ヒポクラテスの誓い”が示した真実

連続ドラマW-ヒポクラテスの誓い-北川景子-感想

解剖の結果が示すものを追い求め、その先にみえたものは“ヒポクラテスの誓い”が試されるような衝撃の事実です。

光崎は光崎なりの方法で、古手川は古手川なりの方法で、活路を見出そうと懸命に手を尽くします。そして、真琴も──。

全体の構成は練られたものになっていますが、ただ、結末のシーンで真琴がとった行動は、現実的ではないというのがおそらく大方の意見では。

原作と実写版は別物ということを前提として観ることができるならば、本作の北川景子と尾上松也の熱演は、一見の価値があるものだと思います。

written by 空リュウ

【連続ドラマW】「誤断」を観た私見・感想

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WOWOW連続ドラマW「誤断」(2015年、主演・玉山鉄二)は、原作・堂場瞬一の同名小説を映像化した作品です。

人は常に判断をすることで前に進んでいる

人は進むべき道を誤ることがあるのか。今いる自分は、歩むべき道程をたどってきたのか──。

大手製薬会社に勤める槙田(玉山鉄二)は、上司である安城(小林薫)の指示に従ううちに、自社が薬害事件に関与している可能性があることを知ります。安城の指示に不審を抱きつつも、槙田は幾多の判断を迫られます。どのタイミングで自分の信念を貫き、どの道を選ぶのか。

抱えている問題が、自分ひとりで解決できるキャパを超えていると気づいたとき、人はどうするのか。薬害の隠蔽、被害者家族との示談を指示された槙田は、問題を吐露する相手として、ある人物を選びます。

“誤断”を回避すべくその人物に助けを求めますが、悩み続ける槙田に予想外の展開が待ち受けています。

歩むべきではない道に足を踏み入れたと知ったとき

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自らの判断が誤断だったと気づき、取り返しのつかない重大なミスを犯していることを悟ったときに人はどうするのか。

犯したミスを告げるのか、または自力で挽回する方法を選ぶのか──。

槙田が足を踏み入れた道の未来が徐々にかたちとなって表れてきます。

本作は、製薬会社副社長の安城がさばいていく事案が中心となり、ストーリーが展開していきます。過去に起きた薬害事件の真相が明らかになったとき、槙田は安城が歩んだ足跡を知り、今自分が足を踏み入れている道を知ることになります。

信念を貫こうとする槙田の立場に自分を置き換えて観るのか、安城の歩んだ足跡に浸って観るのか、人それぞれの視点があるはずです。

個人的には、気づいたときには俯瞰で安城の立ち位置から話の流れを観ていました。何かを犠牲にしても歩まなければならない道があるとしたら、自分の場合はどんな道か。個々の判断でいろんな視点から鑑賞できる作品ではないでしょうか。

written by 空リュウ

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【連続ドラマW】「5人のジュンコ」を観た私見・感想

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WOWOW連続ドラマW「5人のジュンコ」(2015年、主演・松雪泰子)は、原作・真梨幸子の同名小説を映像化した作品です。

ドラマ-リバース-湊かなえ-藤原竜也-感想-第1話関連記事:【小説】真梨幸子「5人のジュンコ」エピソード0を考察

イヤミスの書き手として知られる同著者の作品で、「殺人鬼フジコの衝動」に続く映像化作品ということで話題になりました。

※「読後、イヤな気持ちになるミステリ」の略称・俗語。

全体の流れとしては、ジャーナリストである田辺絢子(松雪泰子)を中心に、登場する5人のジュンコそれぞれのパートでストーリーが展開されていく構成。5人のジュンコのうち、佐竹純子(小池栄子)が起こしたとされる事件は、実際に起きた首都圏連続不審死事件がモチーフになっているようです。

見えない何かでつながる「5人のジュンコ」

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原作のテーマになっているバタフライ効果(エフェクト)は、「些細なことが後に大きな影響を及ぼすに至る連鎖的な相関」を描写しています。これが本作でいう「ジュンコ」という名。そして、ジュンコという名でつながるその相関はすべて負の連鎖です。

登場人物の「5人のジュンコ」は、人にはいえない闇を抱えている女性たち。その5人のジュンコの心の深淵へ切り込んでいく描写が脳裏に刻まれます。

5人のジュンコをつなぎ、展開の起点となっているのがジャーナリスト・田辺絢子。その田辺絢子は過去に起きたある事件をきっかけにノンフィクション作家・久保田芽依(渡辺真起子)に従事しています。

第1話冒頭で描写されていますが、展開していくうえでキーパーソンになっているのが、連続不審死事件の被疑者(容疑者)・佐竹純子です。田辺絢子も佐竹純子が関与したとされる事件を追っています。佐竹純子を演じる小池栄子は、5人もの命を奪ったとされる不気味な悪女を立体的に映し出すことに成功しています。

そして、佐竹純子の過去をたどっていくうえで浮上してくる中学時代の同級生・篠田淳子(ミムラ)も強い個性を放っています。ミムラの怪演も小池栄子に引けを取らないため、密接に絡む関係であることからも、この二人がとりわけ強烈な印象を与えています。

5人のジュンコの心の深淵に潜む闇

連続ドラマW-5人のジュンコ-感想

それぞれのシーンで描かれている女性ならではの心理描写とその演出は、5人のジュンコの心の深淵に潜む闇を鋭く映し出しています。5人のジュンコを演じたキャストそれぞれが、インタビューでも“女の怖さを感じた”と語っているように、ジュンコの心の闇を察したとき、戦慄が走るような感覚を覚えるかもしれません。

彼女にさえ出会わなければ、全然違った人生を送ってたはず

5人のジュンコのうち、誰かが発するセリフですが、いずれの身に置き換えても成立する含みがあります。

原作のエピソード5とエピソード0で真相に迫っている、“佐竹純子と篠田淳子の過去”についても本作の最終話で描写されていますが、その相関は陰鬱としています。

連続ドラマW-5人のジュンコ-感想

エンドクレジットの含みのある演出からも、おそらく真相はこういうことだろう、という導きがうかがえます。個人的には、仮に続編が制作されるならぜひ観てみたいと思える作品です。

“キャストインタビュー”

~印象深かったコメント(抜粋)~

「5人のジュンコ」の魅力について

松雪泰子(田辺絢子役)

人間の悪意。その暗部が様々な形で、それぞれのキャラクターで表現されていくのが非常にリアリティーがあって、だからこそぞっとするというようなものなので。のぞき見をするような感覚で見ると非常に楽しめるのかな。この中にはいたくないと思いましたけど。怖くて。

小池栄子(佐竹純子役)

やっぱ、女が主役ってとこじゃないですか。ここまで強烈なキャラクターの女性たちが、ぶつかりあってくのは、同姓は特に好きだと思いますね。誰かしらのジュンコに自分を重ね合わすことができるし、男性は女って生き物は恐ろしいもんだなって思うと思いますし。でもそれぞれのジュンコに女の本質ってものがちゃんと散りばめられていて、愛らしくもあり、女同士の会話って面白いですよね。これは男の人には理解できない女の業みたいなものが、ウズウズしてる感じになっていますよね。

written by 空リュウ

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