【連続ドラマW】「ヒポクラテスの誓い」を観た私見・感想

連続ドラマW-ヒポクラテスの誓い-北川景子-感想

WOWOW連続ドラマW「ヒポクラテスの誓い」は、2016年に主演・北川景子で映像化された作品です。原作は同名小説・中山七里著「ヒポクラテスの誓い」(2015年刊行)。

北川景子は本作が連続ドラマW初出演であり、また医療系ミステリにも初めて挑んだ作品ということで耳目を集めました。

法医学をめぐる“ヒポクラテスの誓い”

栂野真琴(北川景子)はまっすぐな性格の研修医。いわゆる“研修生”という立ち位置としては、人物設定でありがちな、信念をもって事にあたる芯の強いタイプです。

インタビューで北川景子は、「内科医として働いているときの生き生きとした様子と法医学教室へ移ってからの葛藤のコントラストをつけられるよう演じた」と語っています。

内科に勤務する真琴は、尊敬する津久場教授(古谷一行)のアドバイスによって、法医学教室の光崎教授(柴田恭兵)のもとで研修するところからストーリーが展開されます。

構成の要所で、勤務する浦和医大の館内に掲げられている“ヒポクラテスへの誓い”がインサートされますが、これがつまり、医師としての試金石のような使われ方をしています。

法医学にたずさわる者に必要なものとは

連続ドラマW-ヒポクラテスの誓い-北川景子-感想

法医学教室での研修期間中、真琴は3件の不審死解剖事案にたずさわることになります。

法医学をまっとうする冷静沈着な光崎の言動は、若さゆえに感情で物事を判断しようとする真琴には理解しがたいものとして映り、光崎の真意をはかれません。

光崎は、“解剖によって得られる結果が真実である”ことを真琴に暗に示すが──。

キャスティングとしては、ニヒルな医師役の柴田恭兵は違和感がありませんが、研修医役の北川景子という設定にいくらかのハードルを感じてしまいます。ただ、役に対する意識の高さは演技から感じ取れます。

解剖結果が示した真実とは──

連続ドラマW-ヒポクラテスの誓い-北川景子-感想

法医学の権威・光崎に信頼を寄せる古手川(尾上松也)は、正義感の強い埼玉県警捜査一課の刑事。

まっすぐな性格は真琴と重なって映ります。

事故死の死因に疑惑を抱く古手川は、光崎に解剖を依頼するため根回しに奔走します。このシーンの古手川の正義感には共感できます。ただ、解剖にまわすまでの強引な展開が現実的ではなく、水を差しているように感じました。

光崎と古手川が手を組んで解剖をした結果、その先にみえてくるものとは──。

“ヒポクラテスの誓い”が示した真実

連続ドラマW-ヒポクラテスの誓い-北川景子-感想

解剖の結果が示すものを追い求め、その先にみえたものは“ヒポクラテスの誓い”が試されるような衝撃の事実です。

光崎は光崎なりの方法で、古手川は古手川なりの方法で、活路を見出そうと懸命に手を尽くします。そして、真琴も──。

全体の構成は練られたものになっていますが、ただ、結末のシーンで真琴がとった行動は、現実的ではないというのがおそらく大方の意見では。

原作と実写版は別物ということを前提として観ることができるならば、本作の北川景子と尾上松也の熱演は、一見の価値があるものだと思います。

written by 空リュウ

【小説】東野圭吾「鳥人計画」を読んだ感想・私見

東野圭吾-鳥人計画-小説-感想

1989年に刊行された東野圭吾SFミステリ「鳥人計画」。

別の記事で“東野圭吾作品・異彩を放つサスペンス3選”にふれましたが、本作も東野作品の中で異色のミステリであることは間違いありません。特に、核心に迫る後半でSF要素が色濃く描写されています。

早々に実写化されても不思議ではない作品ですが、スキージャンプがマイナー競技ということも影響しているのでしょうか。

倒叙形式で「鳥人計画」の真相に迫る驚愕ミステリ

日本スキージャンプ界のホープ・楡井明が何者かによって毒殺され、捜査が難航するところからストーリーが展開されます。そして早々に犯人を明かすことによって、倒叙形式で主に犯人の視点から徐々に伏線を張っていきます。

東野作品にいくつかみられる倒叙形式の中でも、本作は伏線回収の面白さが味わえる作品です。

後半に入ると徐々に真相に迫っていきますが、ある人物のマッドサイエンティスト的なSF要素が本作をより一層異色のミステリへと誘っていきます。

天性の資質で“鳥人”になれるジャンパー

東野圭吾-鳥人計画-小説-感想

“鳥人”の異名で名を馳せたマッチ・ニッカネン。

その名はスキージャンプに詳しくない者でも知っているぐらい有名です。本作では“和製ニッカネン”とよばれた楡井明のジャンプをめぐって、個々の思惑が交錯していきます。

作中の楡井明がそうであるように、異次元のパフォーマンスを発揮するアスリートは、何かに裏打ちされた持論がとくにあるわけではなく、天性の資質で事を成し得ているケースが多いように感じます。

“鳥人”を毒殺した犯人と密告者の思惑

東野圭吾-鳥人計画-小説-感想

卓越した能力を妬んでの犯行なのか──。

スキージャンプ関係者の犯行ではないかという警察の読みは、意外にも捜査に時間を要する先入観となります。難航する捜査は、なかなか犯人の目星がつけられないことを意味しています。

行き詰る捜査の最中、警察に届いた密告状。

誰のどんな思惑がはたらいているのか。その密告状の信憑性は確かなのか。そして、“鳥人”を毒殺した犯人にはどんな思惑があったのか。

あらゆる疑念がうずまく中、明らかになる犯人の視点で進行する倒叙形式の描写は、読み手にいくつかの推察をもたらすのではないでしょうか。

“鳥人計画”にまつわる真相とは──

東野圭吾-鳥人計画-小説-感想

近年でも日進月歩の勢いで発展しているスポーツ科学。

東野作品に多く登場する科学的見地が、本作でも“鳥人計画”として進行しています。

マッドサイエンティスト的思考の人物は、狂気の沙汰とも思える本音を吐露しますが、あながち間違いではない着眼点も持ち合わせています。そして、その人物がこの計画に携わることにより、周囲の人間のその後の人生が狂っていく様も、東野作品らしい求心力があります。

犯人の動機、死に至る経緯など、いくらか腑に落ちないところはありますが、スキージャンプの魅力や歴史を知り得ることができ、何よりラストの醍醐味に至るまでの全体の構成が秀逸な作品であることは間違いありません。

written by 空リュウ

【小説】湊かなえ「リバース」を読んだ感想・私見

湊かなえ-リバース-小説-感想

イヤミスの名手・湊かなえが男性を主人公として描写した「リバース」。

本作は2015年に刊行され、2017年に主演・藤原竜也でドラマ化されています。

湊作品は女性視点で名を馳せた作品がほとんどですが、本作は著者が初めて男性視点で描写した作品ということでも話題になりました。

過去をたどることで「リバース」するものとは

大学を卒業後オフィス機器販売の会社に就職し、神奈川県をエリアに営業活動に勤しむ深瀬和久。平凡なサラリーマンの深瀬はコーヒーに魅せられ、コーヒーに執着することで自分の居場所を見出そうとします。

構成としては、深瀬の視点から学生時代のゼミ仲間4人の相関関係を描写し、5人の現在と、過去のある出来事が密接に絡む展開になっています。前半部分の布石は淡々とした描写が続くため、やや退屈に感じる展開が続きますが、後半に入って徐々に伏線が回収されていき、湊作品ならではの読後感が味わえます。

過去の出来事から「リバース」した告発文

湊かなえ-リバース-小説-感想

深瀬には口外することができない過去があります。

それは事の重要性によるものであり、また深瀬の人間性がそうさせているともいえます。

「深瀬和久は人殺しだ」

その深瀬の過去にふれたある人物から届く告発文によって、深瀬は過去と向き合う決心をします。そして、その決心がもとになり、核心に迫るストーリーが徐々に展開されていきます。

深瀬の人間性については、読み進めるにつれてつかめていくことができますが、深瀬視点で描写される思考に違和感を感じる読み手は少なくないのではないでしょうか。

特に仲間に対する屈折した心理は、スクールカーストの下位の視点を連想しますが、これに共感できる部分がなければ、文字を追うのが苦痛に感じるかもしれません。

現在から過去へ「リバース」して見えたもの

湊かなえ-リバース-小説-感想

深瀬の決心は未知の過去をたどることを意味しますが、それによって深瀬の知らなかった仲間の過去が明らかになります。

前半の伏線を回収するに至る、深瀬の一元視点で描写される展開は、読み手のミスリードを誘うに十分な効果があります。ただ、登場人物が限定されるぶん、ある程度の予測はつくのかもしれません。

真相が明らかになったあと深瀬がとった決断とは──。もし自分ならどうするか、そう読み手に想起させる描写は、さすがイヤミスの名手と感じざるを得ない巧さです。

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【小説】湊かなえ「告白」を読んだ感想・私見

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湊かなえ作品の中でもイヤミスの代表作として名高い「告白」(2008年刊行)。2009年度の本屋大賞受賞によって、本作の知名度は一気に高まりました。

本作は湊かなえデビュー作にして代表作となったことでも知られ、2010年に主演・松たか子で映画化もされています。

※「読後、イヤな気持ちになるミステリ」の略称・俗語。

主観と客観が交錯する“独白”形式の「告白」

S中学校に赴任する1年B組担任・森口悠子の娘・愛美の死に起因した、5人の「告白」。本作は、登場人物の“独白”を一人称の視点で描写し、全6章(第1章と第6章は同一人物)で構成しています。

一人称の独白は叙述トリックで使われるケースもありますが、本作では主観と客観のギャップを描写しています。やや独善的に語られる独白は、数あるイヤミス作品の中でも、湊かなえならではのあと味の悪さです。ほかの湊作品でもいえることですが、心に何かが刺さるような読後感を覚えます。

少年Aと少年Bに宣告する戦慄の復讐

湊かなえ-告白-小説-感想

生徒を前にして担任・森口悠子の告白で幕を開ける本作は、第1章が構成上の本章となっています。この独白が第2章以降の独白に影響を及ぼし、少年Aと少年Bの人生をも揺さぶります。

娘の死について宣告(告白)する森口悠子の復讐劇は、並の神経の少年であれば立ち直れないぐらいの衝撃でしょう。

思い込みによって歪んでいく何か

湊かなえ-告白-小説-感想

一人称の独善的視点によって、章ごとの告白者の主観的な視点と、別の人物から見る主観的な告白(別の告白者から見ると「客観」)にずれが生じています。そのずれはまさに思い込みによるずれですが、それによって少年Aと少年Bの人生は歪んでいきます。

そこに面白さを見出せれば、本作は受け入れられるのではないでしょうか。逆に何も感じないのであれば、嗜好が違うということで片付けてしまうしかありません。

フェイクかリアルか──

湊かなえ-告白-小説-感想

一人称の独白により、所どころにフェイク(虚言)が含まれています。おそらくここがフェイクだろうというのは察しがつくと思いますが、告白者は、相手にリアルだと思わせることで他力本願の陰謀を仕掛けていきます。

その陰謀が引き金になって、徐々に壊れていく大切なもの──。一人称で語られる独白によって、崩壊していく様が告白者視点で描かれています。

個人的にはいくつか釈然としない箇所はありますが、ラストのシーンなどは“物理的な事象がクリアできればリアル、できなければフェイク”という解釈でもいいのかなと不承不承消化しました。

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告白 (双葉文庫) 湊 かなえ
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【小説】「東野圭吾」作品│異彩を放つサスペンス3選

東野圭吾-おすすめ-サスペンス-小説

東野圭吾作品の中で異彩を放っているサスペンス3作品

東野圭吾といえばミステリ、というイメージは強いですが、サスペンス系の作品も刊行されています。ほとんどの東野圭吾作品にふれていますが、その中でも異彩を放っている作品をピックアップしてみました。

現実逃避してスリルを味わいたいときにオススメできる、東野圭吾サスペンス3冊。

ふみ込めない領域に挑んだスペクタクル巨編「天空の蜂」

東野圭吾-天空の蜂-サスペンス-ミステリ

“ビッグB”とよばれる大型ヘリを形容したタイトル「天空の蜂」。本作は1995年に刊行、2015年に映画化(主演・江口洋介)されています。

何者かの手によって、爆薬が積載されたビッグBが遠隔操作で奪われ、原発の上空でホバリングするという壮大なサスペンス。犯人が政府に対して要求したものとは──。

陰謀の裏で渦巻く原発に対する遺恨、政府側の非公式な思惑など、巧妙な構成でストーリーを展開していきつつ、同時に原発が抱える問題を世に投げかけた作品でもあります。

刊行されたのは1995年であり、2011年の福島第一原発の事故から遡ると15年も前の作品ということになります。事故を予見していた作品ではないか、という視点からも話題になりました。

工学系の専門用語が頻出するため、苦痛に感じる人も多いかもしれませんが、かなりの時間を取材に費やしたに違いない、その情報量と特異な世界は一読の価値があります。


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松竹ホームビデオ

忍び寄る影が不気味に映るスリル&サスペンス「美しき凶器」

東野圭吾-美しき凶器-サスペンス-ミステリ

東野作品に時おり登場するマッドサイエンティスト。本作でも主要人物のひとりとして登場しています。

ある過去を闇に葬るためのミッションを発端に、トップアスリート4人に迫る大きく不気味な影。超人的な身体能力をもつタランチュラの一挙手一投足に、スピード感があり、スリルが増します。

ミステリ系東野作品に馴れ親しんだ感覚で読んでしまうと、意外な設定と構成に戸惑い、ページが進まない人もいると思います。ただ、本作の醍醐味は、現実離れした展開ではあるものの、隠された過去の事実と次々に起こる殺人に因果があるという点。そして、照準を定めたトップアスリートに迫るタランチュラの動物的な勘から得られるスリルです。そこに東野作品の面白さを見出せるのであれば、本作は楽しめる一冊になるはずです。


特異な世界を描くSF時空サスペンス「パラドックス13」

東野圭吾-パラドックス13-サスペンス-ミステリ

「P-13」とよばれる超常現象によって、男女13人が異次元の世界に。そこは無人の首都東京だった──。

地殻変動や異常気象で徐々に荒廃していく地球の末期のような世界で、サバイバルの共同生活を送るという設定に、好奇心がかき立てられます。何の情報も得られない絶望的な異空間で、いわゆる公共のルールがなく、極限の精神状態に陥る人間の有り様などもリアルに描かれています。ページをめくるスピードも思わず早くなるのではないでしょうか。

別の側面からみると、「天空の蜂」が原発事故を予見していた作品とみるならば、「パラドックス13」は巨大地震や天変地異が日本を襲ったときのVR(バーチャルリアリティ)といえるかもしれません。視覚的に映画化も期待される作品だと思います。

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【映画】「紙の月」を観た私見・感想

映画-劇場版-紙の月-感想

主演・宮沢りえで注目を浴びた映画「紙の月」(2014年、原作・角田光代著)。

平凡な主婦・梨花(宮沢りえ)が、愛に溺れる狭間で巨額横領事件を起こすという、非現実的で好奇ともいえるプロットに惹きつけられます。

原作のコンセプトは、“お金を介在してしか恋愛ができない女性を描きたかった”というもの。ふれることのない歪んだ心理描写に、読み手は引き込まれてしまうのかもしれません。

心の隙に入り込む見えない罠

映画-劇場版-紙の月-感想

本作では、夫・正文(田辺誠一)との結婚生活で徐々に感じていく気持ちのずれや希薄さが、いつしか梨花の心の中で溝となっていきます。環境を変えて働きに出ることで、修復するためのきっかけをつかもうとする梨花。そこで選んだのが、パートタイムで勤務する銀行の営業職。

これによってストーリーは大きく展開していきます。

仕事で成果を挙げて徐々に顧客をもつようになり、あるとき光太(池松壮亮)との出会いが訪れます。光太は梨花の心の隙に入り込み、梨花は光太に傾倒していく──。これ以降、前述の“お金を介在してしか恋愛できない女”が見えない罠に堕ちていく様が描かれています。

この部分の演出としてひとつ感じたのは、二人の恋愛への発展要素がやや欠けているのではないかという点です。意図的にカットされたのかもしれませんが、このあとの展開を考えると、もう少し色づけする必要があったのではとも思えます。

“金”を介在させることで、失った何かと得た何か

映画-劇場版-紙の月-感想

ひとりの主婦が横領を繰り返し、“愛”と“金”に挟まれ、急場を立ちまわっていく様は狂気じみて映ります。あとさきのことは考えず、目の前で起きていることにだけ場当たりで対処していくという方法は、正常な思考であればふつうは選択しないはず。展開としてはこれが凋落への布石となります。

見方を変えれば、どうなってもいいという覚悟ができて、愛を得るために金を搾取するという観念をもつことは、恐ろしさを感じる反面、清々しいとも思えてしまいます。

梨花を演じた宮沢りえは、「本能で生きる道を選んだ梨花は、ある意味羨ましい」と語っているように、梨花の選んだ道は、人生を賭けた究極の選択ともいえます。

written by 空リュウ


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【2017WBC】準決勝「日本VSアメリカ」│届かなかった1点

WBC2017-日本VSアメリカ戦

2017年WBC1次ラウンド3戦全勝、続く2次ラウンドも3戦全勝。計6戦全勝で決勝ラウンド進出。

今回の目玉といわれた日本ハム・大谷翔平の離脱もありながら、正直、ここまで投打が躍進し、世界の強豪相手に連勝するとは予想していませんでした。柱となる存在が抜けたからこそ全員でチームを盛り上げ、一人ひとりが個の力を出し切ったといえるのかもしれません。

決勝ラウンドは負ければ敗退のトーナメント戦。一発勝負は時の運もありますが、それを呼び込んで勝ち上がってこその世界一でもあります。

世界一奪還への大一番「アメリカ戦」

アメリカは過去3大会で、ベスト4(第2回)が一度だけという実績。3月開催という時期的なものもあり、WBCそのものを疎んじていた傾向が強く、所属チームの事情もあってメジャーの選手は参加に消極的でした。

WBCへの意識が低いぶん、たいした結果も残していません。メジャーが世界一という観念から、他国の野球のレベルを軽くみているという節も当然あるでしょう。そのアメリカが第4回大会にしてようやく、メンバー全員メジャーリーガーという意気込みをみせてきました。

メジャーのバッターに日本のSUGANOを知らしめたフォーシーム

WBC2017-日本VSアメリカ戦

日本の先発は菅野(巨人)。

キューバ戦では力みがあってコントロールを乱し、甘く入った球を痛打されましたが、平常心で本来の力を出せば、メジャーの一流バッター相手でも試合がつくれることを証明しました。

メジャー級のフォーシームで、アメリカの主軸から空振りをとる圧巻のピッチング。一線級のバッターが、まともに芯でとらえられない様は痛快そのもの。まさに快投でした。

4回表のアメリカの攻撃で、セカンド菊池のエラーをきっかけに1点を奪われましたが、6回を投げて打者22人に対し、被安打3、奪三振6、与四球1、失点1、自責点0という申し分のない内容。先発の責務を果たしました。

試合後、敵将リーランド監督も菅野を“メジャー級”と称し、コントロールの良さを絶賛していました。この日の菅野は特にフォーシームの走りが抜群に良かったと思います。特に、インハイのフォーシームをメジャーのバッターが空振りしているのが印象的でした。

メジャーで即通用するピッチャーと評価されたスプリッターSENGA

WBC2017-日本VSオランダ戦

菅野のあとを受けて、7回からマウンドに上がったのが千賀(ソフトバンク)です。

1次ラウンド、2次ラウンドでの快投は既に世界に知れわたり、“SENGA”の評価はうなぎのぼり。アメリカ戦を終えた時点で、奪三振16は菅野と並んで出場選手中トップの数字です。

7回表のアメリカの攻撃は、5番ホスマーから始まる打順でしたが、いきなりアクセル全開で驚愕の三者三振。オールスターにも出場した3選手でしたが、千賀のピッチングが圧倒しました。落差のある千賀のスプリットは、アメリカ打線に強烈なインパクトを与えたはずです。

8回に連打を浴びて1アウトランナー2、3塁の場面を招いてしまい、サードゴロの間に1失点。2番A・ジョーンズの打球はサード松田の前へ転がるイージーなバウンドでしたが、バックホームを焦った松田が打球をファンブルしてしまった結果です。

千賀は7、8回を投げて打者8人に対し、被安打2、奪三振5、失点1、自責点1という内容でした。特筆すべきは、トップクラスのメジャーリーガーを相手に、アウト6つのうち5つを三振で奪ったこと。三振がとれるピッチャーは高い評価を受けます。この大会でメジャーリーガーSENGAという門戸が開かれたのは間違いありません。

日本打線がとらえられなかったアメリカ投手陣のツーシーム

WBC2017-日本VSアメリカ戦

アメリカに1点先制されてしまいましたが、日本のファンは、過去6戦で見せたような打線の奮起を期待していたと思います。しかし、継投でつなぐアメリカのピッチャーを日本の打線はとらえきれませんでした。6回裏の2番菊池の同点ホームランが唯一とらえることができた一打でしょう。

試合後、5番中田(日本ハム)は、「ボールが予想以上に動いていた」と語っています。「スピードは感じないが、ツーシームに差し込まれる」とも。どのバッターも、NPBでは見ることのないメジャーのツーシームに戸惑っていたという印象です。バットには当たるものの、芯をはずされた勢いのない打球を前に飛ばすのがやっとでした。

象徴的だったのは、8回裏、代打内川(ソフトバンク)のヒットを足がかりに、2アウトランナー1、2塁で4番筒香(DeNA)を迎えた場面です。5番手マランソンから筒香が放った打球は、ホームラン性の角度で上がりましたが、伸びを欠いてライトフライに終わりました。この一打もやはり、差し込まれて芯をはずされていた結果でしょう。

紙一重の内容ではあるものの、勝ち負けは大きな差

WBC2017-日本VSアメリカ戦

1点を追いかける展開に、最後は力尽きた侍ジャパン。

4回、8回、いずれも守りのミスが絡んでの失点でした。日本は投手力を中心に堅実な野球で勝つことを信条にしているだけに、悔やまれる内容です。雨で湿った天然芝という状況で、読めないバウンドになったり、わずかなスリップが発生するなど、不運なことも重なったと思います。

この試合に関しては、メジャーのピッチャーを打ち崩すことができなかったことが敗因です。いくら日本のピッチャーが良いとはいえ、世界の強豪を0点で抑えることは至難の業です。ある程度打線がつながって得点しないことには勝利は見えてきません。

菅野、千賀が強力アメリカ打線を相手に好投し、最少失点で抑えましたが、その中でも何本かはバットの芯でとらえられ、痛烈な打球をはじき返されていました。さすがメジャーリーガーといってしまえばそれまでですが、日本のバッターもメジャーのピッチャーに対応できるスキルを身につけることが不可欠です。次回WBCでは、メジャーのピッチャーのツーシームを、日本の打線が打ち込んで得点するシーンが見られることを期待しています。

  1  2  3  4  5  6  7  8  9 
アメリカ 0  0  0  1  0  0  0  1  0 2 6  0 
日本 0  0  0  0  0  1  0  0 0 1  4  1 

【勝】ダイソン 【負】千賀
【本】[日本]菊池(1号)

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written by 空リュウ

【WiMAX2+】評判・エリア・料金・速度制限は?

WiMAX2-ワイマックス-評判-エリア-速度制限-料金

2009年にサービスが開始された「WiMAX」(下り最大40Mbps/2009年時点)。当時、ワイヤレスで高速データ通信ができる画期的なサービスとして注目されました。

新規サービスの初期トラブルにありがちな通信遅延、電波障害、また、のちの速度制限(後述)実施に対する訴訟など、何かと騒がれた頃もありました。現在は、WiMAXから上位サービスの「WiMAX2+」(2013年サービス開始)が展開されて、より高速な通信サービス(下り最大440Mbps/2017年2月現在)が開始されています。

WiMAX2+利用可能エリアの拡充

WiMAXのサービス開始当初は利用可能エリアが都市部(特に都内)に集中し、地方都市での利用メリットはほとんどありませんでした。その後、基地局の増設によって徐々にエリアが広がっていき、WiMAX2+では地方でも快適に利用できるようになりました。都内では地下鉄でも接続できるようになっています。

エリアのカバーについては提供プロバイダーに以下のような掲載があります。

全国実人口カバーは1億人、屋外基地局 20,000局を達成。さらに、実人口カバー率も、全国政令指定都市で99% 以上。(2017年2月現在)

UQ WiMAXのWebサイトではピンポイントでエリア判定ができるので、契約前に確認しておくことが必要です。

WiMAX2+はプロバイダー契約が料金メリットあり

WiMAX2-ワイマックス-評判-エリア-速度制限-料金

WiMAX2+契約にあたっては、キャリアで契約すると割高になるので推奨できません。プロバイダーで契約したほうがキャッシュバックなどの料金メリットがあり、2年間の支払総額でコストダウンにつながります。契約前に、価格ドットコムなどで最新の料金体系、割引条件について確認する必要があります。

WiMAX2+「ギガ放題」料金比較(2017年2月現在)

以下は、参考まで、「ギガ放題」の料金比較(2017年2月現在)です。割引条件など、その時どきのキャンペーンで変わるので、詳細は各サービスのWebサイトで確認が必要です。プロバイダーで契約した場合、初月無料や2ヶ月割引など、各種割引サービスが適用されます。また、auユーザーの場合、「UQ Flatツープラス」(ギガ放題またはauスマホ割)で契約すると、「auスマートバリューmine」に申し込めるため、最大934円/月の割引対象になります。

会社名初期費用月額料金キャッシュバックモバイルルーター
au3,000円4,380円 ※10円実費
GMOとくとくBB3,000円4,263円 ※2最大34,000円 ※30円
Broad WiMAX18,857円 ※43,411円 ※50円0円
※1 2年契約。2割引サービス加入後の適用料金。
※2 2年契約。3ヶ月目以降の月額料金。
※3 モバイルルーターの種別によって差異あり。
※4 初期費用0円の期間限定キャンペーンあり。
※5 2年契約。3ヶ月目以降の月額料金。クレジットカード払いが条件。

2017年2月より速度制限データ使用量「3GB→10GB」に

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ただ、2013年にWiMAX2+がサービス開始になり、その2年後の2015年4月より、「データ使用量3日間で3GB」の速度制限が実施されることになりました。つまり、3日間の合計データ使用量が3GBを超えると翌日から速度制限がかかり、通信速度が抑えられてしまう措置がとられたのです(制限解除は3日間の合計データ使用量が3GBを下回った日の翌日)。

速度制限がかかると、YouTubeの標準画質(360p)が視聴できる程度の速度となってしまい、大容量のデータ通信はできなくなります。WiMAX2+契約時、「速度制限なし」と触れ込まれていた多数のユーザーは、この厳しい制限措置に対して猛反発し、消費者庁などにクレームを上げるなど対立姿勢を強固にしました。メディアやニュースにも取り上げられ、関係各省庁をも巻き込んで大炎上する始末です。のちにユーザーが、UQコミュニケーションズを相手取って訴訟を起こす事態にまで発展しました。

UQコミュニケーションズ側の主張としては、一部のユーザーによる大容量のデータ通信を抑制するための措置、ということでした。要するに、限られたWiMAX2+ネットワーク帯域の中で、一部のユーザーが帯域を専有により、ほかのユーザーの通信速度が遅くなってしまうことを避けるための回避策という言い分です。

この速度制限について、2017年2月より、以下のとおり3GBから10GBへ緩和されています。この措置によって、大容量の通信を長時間行う必要がない限り、速度制限にかかることはまずないと思います。

WiMAX 2+サービスにおいて、2015年4月1日より運用を開始いたしました、混雑回避のための速度制限(注1)につきまして、同年7月15日から、より利便性の高い運用方法への準備が整うまでの間、暫定運用を行ってまいりました。
このたび、ご利用状況等を踏まえ、できる限り多くのお客様の利便性向上とネットワーク利用の公平性確保の観点から、様々な検討を重ねた結果、2017年2月2日(注2)より、以下のとおり速度制限の内容を変更させていただきますので、お知らせいたします。

WiMAX2-ワイマックス-評判-エリア-速度制限-料金

(注1) 直近3日間でWiMAX 2+およびLTE方式の通信量の合計が3GB以上となった場合に混雑回避のための速度制限を実施しております。
(注2) 2017年1月30日から2月1日の3日間を最初の適用期間として、以降、直近3日間でWiMAX 2+およびLTE方式の通信量の合計が10GB以上となった場合、その翌日(初回適用は2月2日)より、通信速度を制限させていただきます。
(注3) 2時前より継続して利用している通信については、2時以降も最大で6時頃まで速度制限が継続することがあります。この場合、一旦、セッションを切断すると速度制限が解除されます。
(注4) 2015年7月15日より、暫定運用として、制限後の速度をYouTube動画のHD画質レベルがご覧いただける速度以上に緩和しておりました。
(注5) 送受信の最大速度であり、実際の速度は電波環境等に応じて1Mbps以下となることがあります。

(引用:UQコミュニケーションズ)

よりユーザー目線のサービスを

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WiMAX2+は、モバイルツール(ノートPC、タブレット、スマホ)と相性が良く、現代にマッチした便利なサービスであり、個人的には満足しています。ただ、現行の利用料金はコスト高の感があることは否めません。今後はコストとインフラの両面で、よりユーザーに優しいサービスに改善されていくことを切に願います。

written by 空リュウ

【2017WBC】2次ラウンド「日本VSオランダ」│記憶に残る接戦

WBC2017-日本VSオランダ戦

2017年WBC1次ラウンド・プールB、3戦全勝。

日本は1次ラウンドを3戦3勝とし、見事1位通過を果たしました。

日本 11-6 キューバ
日本 4-1 オーストラリア
日本 7-1 中国

3/12より2次ラウンド(プールE)が始まっています。2次ラウンドの日本の初戦は、スターティングメンバーに現役メジャーリーガー5人を並べ、さらに4番にバレンティン(ヤクルト)を据える豪打オランダ。

延長11回タイブレークまでもつれる大接戦となりましたが、5番中田(日本ハム)の勝ち越し2点タイムリーで8-6とし、オランダに競り勝ちました。

2次ラウンド突破の鍵となる重要な一戦「VSオランダ」

日本と並んで前回大会ベスト4で、今大会屈指の強力打線を誇るオランダは、間違いなく優勝候補の一角です。この一戦は、今大会を勝ち抜いていく上でひとつの指標になります。

日本の先発は、キューバ戦で4回1失点と好投した石川(ロッテ)。

日本は2回表、8番秋山(西武)の犠牲フライで先制しました。しかし、その直後の2回裏に、オランダ6番J.スクープにソロホームランを打たれ、すぐさま1-1の同点とされます。石川はコーナーへ丁寧に投げ分けていただけに、体勢を崩しながらもレフトスタンドに運んだJ.スクープの一打を認めざるを得ません。

打線につながりをみせる両チーム

WBC2017-日本VSオランダ戦

試合が大きく動いたのは3回の攻防でした。

オランダの先発はソフトバンクで活躍しているバンデンハーク。パリーグ奪三振率1位の好投手であり、日本打線を熟知している難敵です。

3回表の日本の攻撃。日本の各バッターは、高い集中力を保ち、狙い球をしぼって挑んでいました。2試合連続本塁打中の5番中田が、値千金の3試合連続となる3ランホームランで勝ち越しに成功。8番秋山にもタイムリーヒットが出て、5-1とリードしました。

この時点で多くの人が、今日の試合は楽勝なのでは、と予想したはずです。

それが楽観的見解だったと知るのは、その裏のオランダの攻撃でした。

1アウト後、9番Ra・オドュベルから4番バレンティンまで一気の猛攻で、あっさり5-5の同点とされてしまいます。3本のヒットと犠牲フライ、2点本塁打で一瞬のうちに追いつかれてしまいました。特に、バレンティンの同点2ランは、オランダチームに勢いをもたらせる一撃でした。

日本の先発石川は3回を投げて、打者15人に対し、被安打5、被本塁打2、与四球1、失点5、自責点5という結果。けっして調子は悪くなかったと思いますが、オランダ打線の豪打が上回ったという印象です。

渾身の投球でオランダ打線に立ち向かう日本投手陣

WBC2017-日本VSオランダ戦

日本は、4回を平野(オリックス)、5、6回を千賀(ソフトバンク)が力投し、オランダ打線を封じました。オランダの上位打線と対峙した千賀は、ヒットを打たれたものの、後続を気迫のピッチングで抑えました。平野、千賀両投手は、ここまでの4試合で安定した投球をみせています。

日本打線も集中力を切らしていませんでした。

5回表の日本の攻撃。先頭打者の坂本(巨人)がヒットで出塁し、パスボールなどで2アウトランナー3塁となります。この場面で、9番小林(巨人)が外角の変化球にくらいついてセンター前タイムリー。これで再び6-5と勝ち越しました。

今回の侍ジャパンの中で、小林の打力はあまり期待されていませんでしたが、いざ始まってみると、ホームランを放つなど、ラッキーボーイ的な存在で打撃開眼しています。

7回以降も日本のバッテリーは、オランダ打線に細心の注意をはらってアウトを重ねていきます。7回を松井(楽天)─秋吉、8回を宮西(日本ハム)─増井(日本ハム)の継投で凌ぎました。ランナーを出すものの、粘りと渾身の投球でオランダの各バッターに対しました。

バックも守備で盛り上げます。特に、セカンド菊池の広い守備範囲は日本の要。7回1アウトランナー1塁の場面で、3番ボガーツが放った二遊間への痛烈な打球をダイビングキャッチし、アウトをもぎ取りました。1次ラウンドのキューバ戦でも菊池の好守で救われたシーンがありましたが、今後の試合でも菊池の守備に助けられるシーンは必ず出てくるでしょう。

定まらない侍ジャパンのクローザー

WBC2017-日本VSオランダ戦

6-5と1点リードして9回裏オランダの攻撃を迎えた日本。

マウンドに上がるのは牧田か──、と多くの人が予想したはずです。牧田は、1次ラウンドの3試合中2試合でクローザーを努めています(もう1試合は秋吉)。

ところが、この大事な一戦の9回裏、クローザーとしてマウンドに上がったのは則本でした。則本も任されたポジションをまっとうしようと全力を尽くしましたが、1つの四球に2本のヒットを浴び、6-6の同点に追いつかれてしまいます。

試合後の小久保監督は則本のクローザー起用について、「今日は則本で行こうと。理由はないです」と語っています。どうにも腑に落ちない選手起用であり、ベンチワークに不安が残ります。

延長の末、タイブレークで決着

WBC2017-日本VSオランダ戦

10回を両チーム無得点で終え、11回からはルールによってタイブレーク方式(ノーアウトランナー1、2塁)で試合が始まります。

10回表、途中出場で4番に入っている鈴木(広島)が送りバントを決め、5番中田に1アウト2、3塁のチャンスをつくりました。この場面で5番中田は期待にこたえます。迷いのないフルスイングで、レフト前2点タイムリーヒットを放ち、8-6と勝ち越しに成功。

ここまでの中田は、3本塁打8打点と、WBC打者成績ランキングでも上位の結果を残しています(3/13時点でいずれも1位)。NPBのシーズンでは、チャンスに凡退というシーンも時おり見られますが、国際試合などの大舞台では本来の力を如何なく発揮するタイプ。4番筒香も結果を出していますが、勝利打点となる打点をあげているのは、ここまでは中田という風向きです。

結果的にクローザーは牧田

延長に入った10回裏からは牧田が登板し、10回、11回と一人のランナーも出さずオランダ打線を0点に抑えました。

球速はけっして速くはないものの、緩急のあるピッチングと独特の浮き上がって見える軌道に、オランダ打線は明らかに戸惑っていました。インコースのストレートにも詰まり、打たれる気配は皆無。結果的にクローザーは牧田という流れでした。

こうなった以上、チームとして牧田をクローザーとして固定するなど、何らかの方向性を定めてほしいものです。個人的には、牧田はセットアッパーがベターだとみていますが。

決勝ラウンドまで今の勢いで、アクシンデントなく突き進んでくれることを祈っています。

  1  2  3  4  5  6  7  8  9 1011
日本 0  1  4  0  1  0  0  0  0  0  2 8150
オランダ 0  1  4  0  0  0  0  0  1  0  0 6120

【勝】牧田 【負】ストフベルゲン
【本】[日本]中田(3号) [オランダ]J.スクープ(1号)、バレンティン(1号)

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written by 空リュウ

【2017WBC】1次ラウンド「日本VSキューバ」│混迷の継投

WBC2017-日本VSキューバ戦

2017年3月6日、第4回ワールドベースボールクラシック(WBC)が開幕しました。

日本の初戦は、3月7日のキューバ戦。

日本の打線がつながり、大量11得点をあげ、11-6で何とか逃げ切りました。5点の点差はありますが、快勝というよりは辛勝という印象の内容でした。

WBCの緊張感が漂う初戦の攻防「VSキューバ」

日本の先発は安定感抜群の石川(ロッテ)。

2016年パリーグ最優秀防御率(2.16)、与四球率パリーグ1位(1.55/全体1位は菅野の1.47)、1イニング当たりの球数(15.2球)がパリーグ2位(1位は有原の15.19球)など、精度が極めて高いことを示す数値を数多くもっています。

今回のWBCでは、石川と菅野(巨人)が投手陣の柱です。

ピンチのあとのチャンス

WBC2017-日本VSキューバ戦

1回表、後攻の日本は、内野安打とエラーでいきなりのピンチでしたが、セカンド菊池(広島)の好守などもあり、初回を0点で切り抜けました。キューバとしては先制して優位に進めたかったはずですが、失点せずに凌ぎきったことが日本にとっては大きかったと思います。

そして“ピンチのあとにチャンスあり”の格言そのままに、その裏の攻撃で、3番青木(アストロズ)のレフトフェンス直撃2ベース、4番筒香(DeNA)のタイムリーで日本が先制。キューバの先発エンテンザの立ち上がりにつけ込むことができました。

東京ドームの打球はよく飛ぶとはいえ、メジャーリーガー青木の打球は思ったより飛距離が出たように感じます。青木の野球センスは群を抜いているということは誰もが認めるところですが、このシーンでもさすがの一打でした。

中盤の大量得点でイニシアティブを

WBC2017-日本VSキューバ戦

3回表に犠牲フライで同点に追いつかれましたが、4回裏1番山田(ヤクルト)のあわやホームランというタイムリー2ベースで勝ち越しに成功。

先発石川も140キロ台後半のストレートに、縦に割れるカーブとシンカーをうまくおりまぜ、崩れることなく4回を1失点で抑えました。石川は投球のテンポも良く、コントロールの精度もかなり高いため、見ている側にも安心感があります。

この試合、ゲームが大きく動いたのは5回裏の日本の攻撃でした。

1アウト後、四球で出塁した中田(日本ハム)がバッテリーの隙をついて二盗を決めると、6番坂本(巨人)のタイムリー2ベース、8番松田(ソフトバンク)の3ランホームランなどで一挙5得点をあげる猛攻。日本はこのビッグイニングによって、初戦のイニシアティブを握ることができました。

とりわけ、この日の8番松田の勢いは凄まじく、5打数4安打4打点の活躍。乗らせるとこわいバッターであることを改めて痛感しました。味方にいればこの上なく心強い選手です。

今後に不安の残る継投策

WBC2017-日本VSキューバ戦

石川のあとを受けたのは楽天のエース則本。5回、6回を一人のランナーも出すことなく抑えましたが、7回に先頭打者のデスパイネ(ソフトバンク)にソロホームランを打たれてから崩れました。

7回頭から継投するという選択肢もあったと思いますが、ベンチの判断は“則本でいけるところまでいく”だったようです。

継投か否かの判断はさておき、則本の交代の判断がいまひとつ。4番デスパイネに打たれた一発は仕方ないとして、続く5番、6番に連打を浴びたところで交代だったように思います。2点タイムリーも打たれ、冷静さを欠いて投げ続ける則本が痛々しく映りました。点差があったからそのまま投げさせたのだろうと思いますが、ベンチワークに機先を制する決断力が欠けているように感じます。

則本のあと3番手でマウンドに上がったのは岡田(中日)。ワンポイントでしたが、無難に後続を封じ、7回のキューバの攻撃を3点で抑えました(7回表終了時点で7-4)。岡田のマウンドさばきは良かったと思います。

さらに、続く8回も不可解な継投がみられました。7回裏に筒香の2ランホームランが出たことで9-4となり、点差が広がったこともベンチの判断に影響を及ぼしているかもしれません。

8回からマウンドに上がったのは平野(オリックス)。1アウトを取ったあと、四球とヒットで一、二塁とされ、続くバッターを内野ゴロに抑えて2アウト2、3塁。このタイミングで継投でした。平野のあとを受けたのは、WBC開幕前、小久保監督がクローザー候補一番手と公言していた秋吉(ヤクルト)。

WBC2017-日本VSキューバ戦

ここでクローザーを出すのであれば、最終回も続投させるつもりなんだろう、とふつうは推測します。そもそも、クローザーは最終回の頭からマウンドに上がるのが一般的な起用法のため、8回2アウトからの起用にまずは疑問符がつきます。この日のテレビ中継の解説陣も一様に首をかしげている様子。準備ができていたのか不明ですが、秋吉はタイムリーを打たれ、日本は失点を重ねてしまいました(8回表終了時点で9-6)。

多くの人が、9回も秋吉なのだろう、と予想していたと思いますが、最終回のマウンドに上がったのは牧田(西武)でした。クローザーを任される身からすると、大会前から前もって心の準備をしたいはずですが、首脳陣から牧田にどのタイミングで意向が告げられていたのかは不明です。

このケースでの継投としては、秋吉から牧田よりも、牧田から秋吉のほうが適任だったのではと思います。ロングリリーフのできる牧田を先に使うことで、調子の如何で9回も続投させるという選択もとれます。

試合後の小久保監督は、秋吉のあと牧田を起用したことについて「今日に限っては予定通りです」と語っています。短期決戦において、その時どきの選手の調子をみて起用法を変えていくというのは重要だと思いますが、臨機応変に対応しているというよりは、何となく場当たり的に試しているような印象を受けてしまいます。

権藤ピッチングコーチの意向もあるはずで、監督一人だけの判断ではないと思いますが、継投の不安は拭えきれません。ベンチの判断がブレると、選手のモチベーションにも影響するため、意思統一をはかってチームとしての方向性を明確にしてくれることを願います。

  1  2  3  4  5  6  7  8  9 
キューバ 0  0  1  0  0  0  3  2  0 6113
日本 1  0  0  1  5  0  2  2 ×11141

【勝】石川 【負】イエラ
【本】[日本]松田(1号)、筒香(1号) [キューバ]デスパイネ(1号)

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written by 空リュウ

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